教皇ハビ様

□出発の前に
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「キキとジャミールに出掛けるんだろう?ハービンジャー」
天秤宮から声がかかる。
「急がなくていいのか?
準備がまだだろう?」
「ジャミールに行くのか?」
星矢が聞き返す。
「ああ…すっかり忘れてたぜ、お前とのお喋りが楽しくてな」
「やっぱり光牙達とあまり変わらないようだなハービンジャー」
星矢が苦笑いを浮かべる。
「うるさいな…
まぁ留守番中、お前のアテナをよろしくな!」
ハービンジャーも負けずに言い返す。
「お喋りはそこまでにしておけ!ハービンジャー」
玄武が歩いてくる。
「金牛宮か白羊宮まで送ってやる」
「ちょっとまてよ玄武!」ズルズルと引きずられていく。
「だいたいお前まだ完全に怪我治ってねぇだろ!
何出歩いてんだよ!」
「無論…以前と同じこと!」
手を離し尻餅をつくハービンジャーを見下ろす
「ハービンジャー…パラサイト襲撃の際に、勝手に出歩いた事…よもや、忘れてはいないだろうな?」
完全にお説教モードだ。
「まぁ玄武、ハービンジャーも教皇として考えがあっての事…」
助け船を出そうとしたが
「サジタリアスの星矢!
口を…挟まないでもらおうか?」
一喝される。
矛先が星矢に向きかけたが
「玄武…お前が張り
切ってる時はろくなことがないじゃねぇか…
やめとけって」
玄武の頭をポンと叩いた。
再び玄武がハービンジャーを睨む
「ハービンジャー!」
「だってそうじゃねぇか!
オレには出歩くな、先走るなとか言っといて、1週間か?生死をさ迷ってたのは誰だよ!
それにその腕!
結局コスモで補わなきゃ左腕は動かないんだろ?
そりゃそうだよな?あんな切られ方してんだから!」
地雷を踏んだのは玄武のようだ
「本当なのか!玄武」
星矢が驚く。
「何だよ…鈍いな星矢。」形勢逆転
「冷たい手だぜ?
折りたいと思えないくらいな」
玄武の左腕にハービンジャーが触れる。
玄武は黙ったままだ
「どういう事だ…ハービンジャー」
星矢が聞き返す
「そのまんまだって…
ってか俺に聞かねぇで玄武本人きけよ」
腕を持ち上げられ、眼を背ける玄武
「コスモで覆われてるだけで、骨を感じやしない。
見せかけだけって事だ。
なぁ…」
ハービンジャーが強を込める。
骨が軋む…
だが…
「痛みだって感じねぇんだろ?
つまらねぇぜ」
パッと手を離す。
力なく垂れる腕…
「もっとも…
バレねぇように、さも普通に振る舞うお前の心は…さぞかし折り甲斐があるだろうが…」
骨だの
心だの折る話をするハービンジャーの眼はどうしてあんなに輝くのだろう。
「…玄武…基準こそオカシイが、我らが教皇は俺達が思うよりしっかりしているようだな」
星矢が耳打ちをしてくる。「ああ…アテナ様が指定する筈だ」
さっきも、星矢がとばっちりを受けないようにわざと玄武の頭を触ったのかもしれない。
「だからこそ…早く下に降りてもらおうか?」
本題に戻された。
「折角だから、処女宮にも双児宮にもよらないか?玄武
お前が飛ばしてくれるなら早くすむだろう」
星矢が言う
「ライブラだけ飛べるってのはズルいよな…12宮でも。
まぁ適度な筋トレは骨にもいいから構わねぇけど…」言いかけて
「あ…」
何か思い出したようだ
「インテグラは龍峰と五老峰に向かってるから双児宮は不在だったな」
「インテグラが?何故五老峰に?」
玄武が聞き返す。
「心得バカなお前にゃ…解らねぇだろうな」
ハービンジャーが笑い星矢に目配せする
「成る程…」
星矢は理解したようだ。
「自分の論だけでなく、周りを見ようぜ玄武
色々な要素が転がってるぜ」
「?」
「不謹慎ととるか、新たな流れととるかは考え方次第…か
楽しみだなハービンジャー」
「お前とアテナ程じゃ
ねぇけどな」
玄武に聴こえないようにハービンジャーは星矢をからかう。
自分の女神を護るため、男として星矢とタイタンが闘った事を、死にかけていた玄武は知らない。
「パラドクスの愛は間違った愛だったかも知れねぇが、実の姉が想い続けた男を育てた場所が見たいんだとさ!
回りくどい言い回しだよなぁ」
一応、教皇への願い出ではそうだった。
インテグラは、もしかしたら純粋にしたらそうかも知れない。
だが、龍峰は確かにインテグラに好意を寄せている。
(問題は、あのおとなしい龍峰が告白出来るかどうか…
ま、お節介な考えか)
そんな事を考えながら玄武が繋げた空間に飛び込んだ。
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