短編

□キミのにおい
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ふと気付いた事がある

いつもは清潔なせっけんの匂いを漂わせてるはずのキミ

なのに今日は

甘ったるい匂いがする




キミのにおい




「シャンプーとか変えたかい?」



ボクがそう聞くと「は?」と口を開け間抜けな顔をするサクラ



「何?急に。え?あ?」


「いや、シャンプーとか変えた?って聞いてるんだよ」


「シャンプー…は変えてない」



彼女の答えに、おかしいな。と思い首を傾げると、頭にはてなを沢山浮かべているであろうサクラの顔

やはり間抜けな顔だ



「どうしたの?今日のクルーク、何か変だよ?」


「…変なのはキミのほうさ」


「私ぃ?私のどこが変だっていうの?」


「その甘ったるいにおい!いつものキミのニオイじゃないじゃないか!」


「………。」



数秒間、黙ったままなサクラの顔を覗き込むと目が潤んでいる

やってしまった
つい、声を荒げてしまった

どう慰めようか、あたふたとしているとサクラは涙目で自分の服や髪のにおいを嗅ぐ



「わかんないよぅ…」


「…サクラ?」


「ねぇ、クルークぅ…。」


「な…なんだよ」


「自分のにおいなんか…、わかるわけないじゃんかバカぁっ!」



ごもっともだ
僕も自分のにおいなんかわからない
彼女は、本の匂いがする。と言うが、それが本当にその言葉通りのにおいなのかは自分ではわからない

彼女の頬に零れる涙を拭ってやると「バカ」と言われる



「…ごめん」


「ぐすん…。クルークのバカ
そこは黙って抱き締める感じなのわかんない…?」


「なっ…」


「本当に、恋愛には疎いんだから」



ふわりと香るせっけんの匂い
これが僕の好きな匂い

抱きついてきた彼女の頭を撫でれば、また「バカ」と言われてしまう


いつもなら言い返すだろう
けれど今日は特別だ
何も言わず、抱き締めてあげよう


僕のにおいでキミを包み込むよ







(で、結局この甘ったるいにおいは何だったんだろう…)

(あ、それね。たぶんレムレスから貰ったお菓子のせいだと思うの)

(……お菓子…)





end.
 

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