短編
□君の声を
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君をずっと見てきた、君に私のすべてを捧げたあの日から。
私の分まで幸せに生きて欲しくって、ただただ幸せになって欲しくって。
でも君が生まれたのは、きっと間違いなんかじゃなかったんだけど。
上からずっと見てきたから。
幸せそうに笑ってる顔も、いつのまにか大好きになっていた。
「また見てるの?」
今日もまた、上から君の事を観察してた。
今日も幸せかなって、泣いてないかなって。
「うん、一人でも大丈夫かなって思ってね。」
「えらく面倒見のいいお姉ちゃんだな。
もう何年も、毎日毎日飽きもせずに見てるじゃん。」
呆れたように言われても、なんだって構わない。
本当は一緒に生まれたかったよ、傍に居てずっと私が守ってあげたかった。
私の命は儚くて、生まれることは叶わなかった。
だから願う、共にありたいと。
幸せであって欲しいと、私の分まで。
「いいんだ、だって上からでもずっと成長を見てこれたもん。」
「やせ我慢だね、会いたいって思わないの?」
そんな事出来る訳ないじゃないか、だって私が居るのは雲の上。
私の事はきっと知らない、一緒に生まれる命があったって事も知らないんだ。
「そうかな?」
そう言いながら下を見たら、なぜか君は上を見上げてて。
上を向いたままにっこりとほほ笑んだんだ。
「・・・気づいてるのかな?」
「さあね、でも神様は気紛れだからね。」
ずっと見てる、ずっと祈ってる。
君が幸せでありますように…と。
END