自由な世界

□Time Strager
1ページ/4ページ



「ねぇ母さん!今日は森の黒騎士のお話して!!」

無邪気な少女は一冊の本を手に、母にそうねだった

「あらあら、イリーナは本当にそのお話が大好きねぇ…」

「うん!!大好き!!」

イリーナと呼ばれた少女は力強くうなずく

もうこのお話を何度読んだだろう?

少女の母は本を受け取ると小さくため息をついた

「さあ、ベットヘ入りなさい?お話を始めるわよ?」


  TIME STRANGER
    


ブランディア王国童話『森の黒騎士』


ブランディアの森にはひとりぼっちの剣士が住んでいる

彼は人を襲わない 彼は何も奪わない

…そして彼は笑わない


彼はなぜ戦うのだろうか 何のために?誰のために?

彼は答える 



すべてを守るために        そして償うために



彼は愛した人を待ち続けた 時を忘れて戦い続けた

そうするうちにいつしか彼はこう呼ばれるようになった

そう、時忘人と……





「…あら、寝てしまったのね?」

母がふと娘を見るとスースーと気持ちよさそうに寝息を立てて眠っている
口元に微かに笑みをたたる幸せそうなわが子の寝顔に母もまたニッコリと笑った

「おやすみ、イリーナ……」















どれもこれも全部夢だったら良かったのに…

そう考えるのも、もう何回目だろうか

俺は今も生きている

死ぬことが許されぬこの身を何度恨めしく思ったか

神よ、俺に与えられた時間を…それを罰と言うならばいっそ殺してください



…神様は時々悪魔よりも残酷になるものだ…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ