Novella
□歴代拍手小説置場
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「(似合わないなぁ…)」
私はげんなりしながらその様を見ていた。
たまたま見付けた谷が花畑になっていて、仕事続きな事もあってイルミが「休憩しよう」と提案してきたがまさか嬉々として花冠を作ると誰が思おうか。
楽しいのかな?黙々と作っているけれど無表情過ぎてそれすらも分からない…。
「出来た」
「あ、可愛い」
可愛く丁寧に作られた花冠。手先は中々器用な様だ。イルミはその花冠を上へ上げると…
「どう?似合う?」
「うん…とっても…」
まさかの自分の頭に乗せた。私の頭に乗せてくれるかな?と言う期待はあったけど、まさか自分の頭とは。
しかも似合うか聞かれた。そんな無表情で聞かれてもなぁ…。
「何?似合わないの?」
「いや、そうじゃないけど」
「あ、そうだ。今もう一個作ってるんだ。それはすぐあげるよ」
そう言ってしばらくしてから「はい」と何か渡された。何だか豪華だけどえらく小さい輪っかが。
「あげる」
「ありがとう…」
ここで私は心臓が飛び出る程驚かされる事になる。
この小さいのを頭に乗せるのか、と思いながら実行すると、イルミは「違う違う」と言い私の頭から小さな冠を奪った。
「え?違うの?」
「これの位置はここだよ、ここ」
頭に乗せてしまった小さな花冠は、左手の薬指に移動した。
「うん、サイズピッタリ」
自らの花冠を私の頭に移動させると「ベールが付いてれば完璧なのに」と零した。
「い、イルミ…!?」
「指のサイズ分かったし、もっとちゃんとしたの用意したら、言うから」
それまで待ってて。ちなみに拒否の言葉、オレは聞かないよ。
それから私は、日が差し込む窓際にイルミ製花冠と花の指輪を置いておいた。誓いの言葉と供に銀の指輪をもらったのはそれからほんの僅かの出来事。
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