進撃

□最初で二度目の恋〜昼間編〜
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次に目を覚ますと、時計は正午になりかけていた。

隣では、ぐったりとしたリヴァイさんが横たわっている。

後処理だけは済ませたものの服を再び着る気にもなれず、裸体のまま寝ていたようだ。

リヴァイさんの肌と直接触れ合う部分が暖かくて心地いい。

その体温を求め、リヴァイさんの腰を引き寄せようとする。

「…っ……痛い…」

「あ、すいません」

まだ寝ていると思っていたが、どうやら起きているようだ。

「まったくだ。どっかの誰かががっつくせいで、腰が痛い。まともに立てねえ。おまけに腹も下しそうだ」

途中から理性が切れてしまい、リヴァイさんには無理をさせた。

何回イったのかすら記憶にない。

「無理をさせてしまいましたね…でも、その分俺を頼って甘えてくれて構いませんよ」

「…悪くない」

そう言ったリヴァイさんの声は、少し嬉しそうだった。

「リヴァイさん、お腹空いてません?朝ご飯も食べてないですし…何かリクエストありますか?」

「紅茶が飲みたい」

それは食べ物じゃない、とツッコミそうになる。

でも、リヴァイさんの1日は食事からではないことを俺は知っている。

「そうですね。リヴァイさんの1日の始まりは紅茶でしたね」

「クソガキだと思っていたが、少しは学習しているようだな」

「あなたより、1年先に産まれましたから」

2人で顔を見合わせ笑い合う。

リヴァイさんと過ごす時間は、今までに過ごしてきたどの時間よりもかけがえのないものだ。

「じゃあ、紅茶を入れてくるので寝ていてください」

ベッドから立ち上がり床に散らかったままの服を着ようとすると、腕がグッと掴まれた。

「うぉっ‼︎」

ベッドを見ると、目だけをちらつかせ、枕に顔を埋めているリヴァイさんが何かを言おうとしている。

何が言いたいのかは、察しがつくが本人の口から言わせたい。

「…も…れて…いけ…」

「まったく…困った人だ。リヴァイさん、はっきりと話してくれないと伝わりませんよ?」

「っ…だ、だから…‼︎部屋に一人にする…な…クソ野郎…」

「はい。よく言えました」

ご褒美として、おでこにキスをする。

ギュっと両目を結ぶリヴァイさんが天使に見えた。

「昔よりも素直になりましたね」

「俺は昔から素直だ」

どの口がそんなことを言うのだろうか。

「冗談はよしてください」

「冗談ではない。本当だ。ただ、…」

そこまで言い、リヴァイさんは一呼吸つく。

「エレンがあまりにも面白い…違うか、嫁にしたい可愛さだったからな。少しからかっていただけだ」

「可愛いのはリヴァイ兵長ですよ。今も充分過ぎるほど可愛いです。というか、からかうって…大人のやることじゃないですよ‼︎」

「今は、問題なかろう?」

「ぐぬぬっ…言い返せません」

得意気な顔をしたリヴァイさんに年の差を感じた。

1年しか違わないが、俺より年下のはずなのに。

まるで前世での年の差が、後世にまで引きずっているかのようだ。

どちらにせよ、リヴァイさんにかなう日がくるとは思えなかった。

「…エレン?」

「…あなたにはかないませんね」

少しだけそれが悔しい。

「…何を言っている。1年先に産まれたエレンの方が、俺よりこの世界のことを知っているだろう?」

「そりゃまあそうですけど…」

「この世界の知らないことを、お前が先に産まれて得た知識を、俺に教えろ。一つでも多くだ」

真面目な顔をして、俺が何を考えているのか察した目で語りかけてくる。

リヴァイさんは、俺のことなら何でもお見通しなようだ。

この世界は、前世とは違う。

前世では、沢山のことをリヴァイさんに教えてもらった。

今度は、俺がリヴァイさんに沢山のこどさを教えるばんなのかもしれない。

俺の方が年上なのだから。

「…はい。あなたがそう望むのなら、それに応えましょう」

「…困ったやつなのはどっちだか」

「お互い様でしょう?」

「だな…んっ…」

小さく笑みを浮かべるリヴァイさんの唇に、軽いキスをする。

唇を離すと、心地よさそうに目を細めるリヴァイさんが目に映った。

まるで猫のようだ。

「…そんなにいいですかキス?」

「嫌いじゃない…そろそろリビング行くぞ」

照れ隠ししなくてもいいのに。

あからさまにアワアワとするリヴァイさんに、ふと思い出したことを聞く。

「リヴァイさん、自分で服は着れますか?」

「随分となめられたものだな」

俺が言いたいのは、子どもに向けて言う意味での言葉じゃないのだが、うまく伝わらなかったらしい。

「いや、そうじゃなくて」

「っ…いっ…‼︎」

「ああ、ほら…」

腰を痛めてるという意味だったのだが、本人はそれすらも忘れていたらしい。

「本当に大丈夫ですか?」

「服くらい着れるに決まってる。そこまで子どもじゃねえ」

「じゃあ、着替え終わるまでら待ってます」

とうの昔に着替え終わった俺は、変わらずベッドに腰掛けリヴァイさんを待つ。

「思うように動かねえ…」

「気だるさがまだ抜けてないのでしょうね」

「今日は、一日中のんびりだな」

「そうですね」

「ここでな」

「はい。…って俺の家ですか⁉︎」

さらっと言われ聞き流すところだった。

まさか、俺の家で1日を過ごす日がくるとは思わなかった。

夢でも見ているかのようだ。

「何か悪いか?もう一泊するくらい問題なかろう。それと、明日は俺の家だ。分かったな?」

「はい‼︎」

素直に離れたくない、ずっと一緒にいたいと言ってくれれば分かりやすいのに。

本当に素直じゃない。

でもそこが可愛いところでもある。

「…よし、終わった。エレンよ、紅茶を飲みに行くぞ」

「はい。立てますかリヴァイさん?ちゃんと支えるんで」

「立てるが力が入らん」

「じゃあ、抱っこにします?」

「悪くない」

断られるのを前提にしていた。

冗談で言ったつもりだったが、承諾されてしまった。

「えっと…じゃあ、行きますか」

「そうだな」

要望に応え、リヴァイさんを抱き上げリビングに向かう。

美味しい紅茶が入ることを祈りながら。

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