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□ある雪の日の過ごし方〜トニ編〜
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しんしんと降り積もる雪をオレは部屋の中から見ていた。


朝、窓を開けたら雪が積もっていた。

何十年かぶりの大雪。

久しぶりの雪と交通渋滞に巻き込まれないように早めに家を出た。

サクサクと音を立てる雪に笑みをこぼしながら仕事に向かう。


寒いけど、こんな日も悪くない。




「まだ降るのかな……」


休憩中、坂本くんが外を見る。



「お昼からは晴れって言ってたよ。朝よりは止んできてない?」



長野くんが窓ガラスに顔をつける。



「でも、積もってる量、半端ないよな」


「溶けるまでにしばらくかかりそうだね……」



そんな穏やかな会話をしてる二人。





「ね、雪だるまとか、作りたくね?」




急に思い立ってそう告げると、坂本くんと長野くんがぽかんとしてオレを見上げる。





「…………作りたくねー」


「……オレもムリ」



坂本くんの言葉に長野くんが続く。



「何でっ? こんだけ雪あるんだよ? ちょーでかいの、作れると思わない?」


「思わない」



即答する坂本くんに長野くんが笑う。




「ちょっとーやる前からそんなこと言わないでよー」



本当、心外なんだけど。



「ねー長野くん、作ろうよー」


「ヤダよー」


「何でー」


「……寒い」




長野くんがホットコーヒーの入ったカップを両手で掴む。



「何だよーもうちょっと雪の日を楽しもうよ!」



こんなに降ることなんて珍しいのに!

しかも積もってるんだから!

雪遊びに最高な日なんだけど!




「お前、いくつだよ……」



坂本くんが呆れた顔でオレを見る。



「本当、こういう時の井ノ原って、子供に戻るよね」



……何か、すげーバカにされてねーか? オレ。

二人を誘ってものってくれねーし。

じゃあ、いいよ。



「一人で行ってくるからっ!」



そう、告げてオレは部屋を飛び出した。




何なんだよー

付き合ってくれてもいーじゃねーかよ。

雪だるまなんて滅多に作れねーんだから……。



と、外に出た瞬間。



「うわっ、寒っ……」



想像以上の寒さに身を振るう。


この格好でも寒い……。

やべぇな……。

でも、あんな風に出てきた以上、戻れない。


坂本くんに、ほらな、寒かっただろって笑われるのがオチだ。



意地でも雪だるま作ってから帰ってやる!


寒さに震えながら、少しづつ降る雪の中で、コロコロと雪を転がす。



地味な作業だけど、しゃがんでこれは結構、キツイな……。


どれくらい大きくするかだけど……。


せっかく降ってんだし、でかいのを作りたい。



でも、一人では大変だよな。


健とか呼び出してみようか。


あいつだったら、行く行く〜なんて喜んでくれそうだけど。


でも……。





「意外と寒いじゃん」




オレが健を呼ぼうか悩んでいると、後ろから声が聞こえた。









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