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□ある雪の日の過ごし方〜カミ編〜
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……雪合戦しないって言ってたじゃん。


健くんは置いてくとか言ってたのに。


健くんよりも剛くんの方が真剣に雪玉を作って、投げてるから、笑えてくる。


すると……。



「いてっ……」



オレの腕に雪玉が当たる。



「何笑ってんだよ、おいっ、健。次は岡田だ!」



剛くんがオレをめがけて雪玉を投げて来ると、健くんも続く。



「いやっ、ちょっと待ってよ! オレ、雪玉……」



作ってない……って言う前に健くんの投げた雪玉が首元に当たり、雪玉が崩れて服の中に入る。



「冷たっ! 服ん中入った。もぉ、勘弁してよ……」



健くんが楽しそうに笑う。


よくこんな冷たい雪、触ってられる。



「お前が参加しないからだろ。岡田、覚悟っ!」



剛くんが腕を振り上げるから、オレは思わず健くんのところに逃げた。



「岡田、よく来た。狙いは剛だからなっ!」


「あっ、そっち二人は卑怯だぞ!」


「仕方ねーじゃん。3人しかいないんだから……」



と、健くんが雪玉を投げるから、オレも剛くんめがけて投げると……。


あれ……意外と楽しいかも。





雪合戦なんていつ振りだろう。


……小学校以来やってない気がする。


雪をかき集めて、力込めて固めて……。


当たっても壊れないくらいの痛い雪玉を作ったことを思い出した。


今でも作れるかなぁ。




「ほら、岡田っ! 投げろ投げろ!」



健くんがたくさん雪玉を作ってくれて、オレが投げる。


うん、やっぱり楽しい。



「つーか、卑怯だろ。オレ一人だって!」



剛くんがそう言って、雪玉を投げるのをやめると、健くんが立ち上がる。



「でも、あったかくなったでしょ? 寒いんだから、体動かさなきゃ!」


「……ムダに体力使わせやがって……」



そう言いながらも嬉しそうな剛くん。


くるりと踵を返して歩き出す。


さっきみたいに、縮こませて歩く体はない。


それはオレも同じ。



「何だよ、あれ。少しはさ……」


「健くん、遅れるから行こう」



オレはふてくされている健くんの手を引いて、剛くんに追いつく。



「あー楽しかったな」



本当に楽しそうに健くんが言うから、オレは笑ってしまう。



「うん、楽しかったよ」


「……久しぶりにな」



剛くんが言葉を続けた。






オレたちの後ろには投げきれなかった雪玉が沢山残っていた――。




―END―




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