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□大好きが溢れ出すcandy〜剛健〜
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緑色の包装紙でラッピングされたそれ。

剛は受け取ってはくれたものの、怪しんでいるのが分かる。



「健、これ何?」


「今日はホワイトデーでしょ? お返し……」


「俺、バレンタインに何もあげてねーだろ」



そう言いながらも、丸い包みを確かめるように握っている。



「バレンタインには貰ってないけど、いつもお世話になってるから」



俺がそう笑うと剛が一瞬、うれしそうな顔をしたのを見逃さなかった。



「あと……」



一呼吸置いて、剛を見る。







「俺、剛のことが好きだから――」






この気持ちを伝えたくて。

俺の大好きを、剛が今、手にしているそれに込めた。







「……んなこと、分かってるよ」






剛がぼそっと呟いた。



「開けていい?」


「うん」



剛の驚く顔も見たくて、俺はうなづく。

緑のラッピングが解かれると、中からも緑が出てくる。



「メロン?」



剛の目が輝いた。




「剛、好きでしょ?」









あの日。

岡田の為に買いに行ったホワイトデーのコーナー。

ふっと見ると、フルーツのカップとフルーツ味のキャンディがあった。

フルーツのカップに詰め放題……。

メロンのカップを見た瞬間、俺は剛を思い出した。




これにありったけの愛を込めようって。





剛が早速、メロンキャンディを取り出したから、俺はそれを奪う。



「何すんだよ!」


「もー食べる前にすることあるでしょ?」


「何だよ、することって」



俺を睨む剛に両手を広げた。



「ほら、ギュッて……」


「しねえよ」



俺の言葉を遮るように剛が言う。



「何で? 俺のこと、好きなんでしょ?」


「…………」



剛は俺をチラッと見て目を逸らす。



何だよ、その態度。


いいよ、剛がしてくれないなら、俺からしちゃうからっ。

顔もこっちを向けてくれない剛に抱きつく。

再び剛が俺をチラッと見て、顔を背けた。


だから、何で……。





「言わなくても分かってんだろうが……」





当たり前と言わんばかりの剛の言葉。

顔が少し赤いのは照れてるんだろうな。













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