文章(黒バス)
□もしもこれが夢ならば
1ページ/2ページ
黄瀬涼太は、大きな壁にぶち当たっていた。
「…ッ。どうしたらいいんスかーッ!!」
心の中で叫ぶ。
敢えて大声を出さないのは他でもない。
「…(すう、すう )」
忘れ物したので部室に戻る
↓
忘れ物探す
↓
見つける
↓
だがブツは…
「…よりによって…居眠りしてる笠松センパイの下ッ…」
マ ジ ど う し よ う
と、まぁ一応悩んでいるのである。
部誌を書いているうちに寝てしまったのであろう…机では、いつも眉をよせている笠松が、幸せそうな顔で寝ているので、安眠を妨害することはできない。
けれども、忘れて部員に見つかるとかなり面倒なものなので、そのまま帰る訳にはいかない上に―
「センパイ超カワイイ!!マジ天使!!生きててよかったア!!(心の中)」
寝顔を見て悶絶している。
普段、顔を見ていると、
「なんだ?テメエ、キメエ。シバくぞ!!」
と、折檻がくるので、なかなかじっと見る機会はない。
こうやってじっと文句も言われずに見ることは貴重なので、じっくり堪能していこうというのだ。
しかし、まぁ、好意を抱いているのは、現役健全なDKなので、好きな人のこんな寝顔は写真におさめ、スマホの待ち受けにするもよし、プリントアウトし、部屋に飾っておくもよし…
などという、ゲスな気持ち大半であるが。
さっそく写真を撮ろうとしたところで
「んん…ぅん? き、せ?」
笠松が目を覚まし、
(そんな寝ぼけ眼もマジ天使!!ア、でも、写真撮ろうとしたってバレたらシバかれる…ッ!!)
と思っているのも束の間。
「…きせぇ…(むぎゅ)」
いきなり 抱 き つ か れ た
相当寝ぼけているのか、
「んん…(グリグリ)」
頭を押しつけてくる。
「…待て待て黄瀬涼太…情況を把握しろ…っ…」
情況を考え直してみても、何故いきなり抱きつかれたのかは分からない。
「〜〜ッ!!(赤面)どどど、どういうことなんスかーッ!?」
「ふはっ…きせかわいい〜…(グリグリ)」
「反則ッスよ。なんなんスか。可愛すぎ…萌え殺す気ですか?」
「…好きな奴にこうしたっていいだろ?夢なんだから。…現実じゃ、絶対に出来ないんだから…今だけでも…ぎゅって…」
どうやら夢だと思い込んでいるらしい。でもそれより気になったのは
「…好きな奴に…って、好きな奴ってまさか…俺のことッ!?」
まさかまさかの衝撃の事実に頭が追いつかない黄瀬。
そのまま固まり3分後。
ようやく飲み込めたようだ。
嬉しすぎてまたもや悶絶している黄瀬と、甘えてデレている笠松の対照的な二人。
そのうちに
「きーせぇー。」
「…センパイ、俺も好きッスよ。あなたのことが。」
「! そうか…フフフ。やったぁ。なあなあ、記念のキスしようぜ。」
「…………ハイッ!?今、何と言いました?」
「だから〜…キスしよ?」
上げ膳食わぬはなんとやら、ここでしないのは男の恥!と言わんばかりに、黄瀬は、自分の唇を笠松の唇に押し当てた。
しかし、キスのあいだ、さっきの笠松の言葉が脳裏によぎった。
『現実じゃ、絶対に出来ない』
「センパイ。」
黄瀬は唇を離して笠松に言った。
「起きてください。これは現実なんですよ?なんなら頬をつねって下さい。」
「ん?そんな、こんなことが現実なワケ…(ムニッ←頬をつねる)い、痛ぁ…!?と、い、いうことは…こ、これは…!!」
完全に覚醒した笠松は、瞬間に赤面、ズザアッと黄瀬から離れ、壁に張り付く。
「じゃ、じゃあ…さっきのキスは…」
「ハイ。本当です。ゴチソウサマでした。」
「(赤面)な、んでテメエは…!!(プルプル)し、しし…シバくぞ!!ってことは…アレも聞いてたんだな!?」
「アレって…あの告白ですか?あれならバッチリ聞いてましたよ?」
そうして笠松に近づく黄瀬。
「俺も好きッス。四月からずっと。
…これで、両想いッスね?」
と、微笑んだ。
主将としての威厳を保てず、醜態(と笠松は思い込んでいる)を晒してしまった笠松は、とうとう観念したのか、
「…べ、別に………ああ、俺は、黄瀬が好きだ。」
と、黄瀬に近づいた。
最終的にはやっぱり男らしい主将を、黄瀬は、包むように優しく抱きしめた。
笠松は、黄瀬の胸に顔を押し付けながら、
「俺のことだけを見てろ。主将の命令だ…お前、モデルだからすげえ人気あって…不安だ。俺だけ愛して、今は、」
『俺から目をそらすな』
男らしいセリフとは裏腹の脅威的な上目遣いで、黄瀬を見上げた。
「俺が、目をそらすとでも?」
そういうと、黄瀬はまた、笠松にキスをした。
完
→次はあとがき