文章(ハイキュー!!)

□ああ、捕まった
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俺の幼馴染みは何かと欲が強い。
いつも何かを求めていて、手に入れることに必死になる。
その様子は、隣で見ていて少し痛々しい。
過去に、俺は、そんな及川が苦しそうだと、本人に言ったことがある。
そんな俺に対して、及川は、

「手に入れるために、何でもやるのは当たり前じゃないの?手に入れた時のことを考えたら、俺は何だって出来るよ」
と、笑った。

その笑顔にどこか暗い影を感じて、幼馴染みなのに背筋が寒くなったことを記憶している。

そして及川は、手に入れた後は、何が何でも離そうとせず、それが離れないようにする為の努力を惜しまない。

バレーの技術も、自分から無くならないように、毎日毎日、欠かさずに練習をする。誰よりも苦労して身につけた技術も、それによってどんどん磨きがかかっていく。
だから今の及川があるのだと、これだけは確信している。
はっきり言って、及川は不器用とは言えないものの、器用ではない。天才なんて持っての他だ。
だが、器用ではないなりに、今の自分をつくりあげた。その点では自慢出来る幼馴染みだ。

そんなアイツは、周りから見たら、ストイックな人間に見えるのだろう。
全ては浅ましい欲から始まったものだとは気づくこと無く。

俺が、アイツの本性がバレないか心配するより前に、及川は自ら仮面を被る様になった。自分が持っている、ドロドロとした欲をひた隠しにして。
演技も上手くなり、たまに俺も危うく騙されそうになった時もあった程に。

皆の憧れ及川を綺麗に演じてみせているのだ。
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