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□short
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「ふう…」

ベッドに腰掛けて、一息吐く。
今日は豚の帽子亭のみんなでのパーティーだった。
バンの作った美味しい料理を食べて、メリオダスの作った料理はホークが処理して。
バーニャエールもたくさん飲んで、すごく盛り上がった。
私ももちろん一緒に呑んで、体がぽかぽかしていい気分だ。
楽しくなって、一人で足をパタパタさせながら鼻歌を歌う。
えへへ、やっぱり七つの大罪のみんなは良い人ばっかで本当に幸せだなあ。
そう思いながら伸びをしたところで、キイ、と音を立てて扉が開いた。
ノックも声も掛けないなんて珍しい、と思って見ると、部屋の入口に立っていたのはキングだった。
そういえばここへ来る足音が聞こえなかった。
キングは浮いているから足音がしないんだ。
頭の片隅でそんなことを考えながら、キングを見つめる。

「キング?」

バーニャエールに顔を赤くしてぼんやりとこちらを眺めるキングを不思議に思って、首を傾げた。
どうしたの、と聞こうとして、キングがこちらへすうっと近付いてきたのに気を取られて言葉を飲み込む。
そのまま近くまで来ると、自然と見上げる形になる。
何だか、様子がおかしい。
もしかしたらかなり酔っているのかもしれなかった。
大丈夫?随分酔ってるみたいだけど、と声を掛けようと息を吸い込んだが、キングが肩を押したことでそれは言葉にならなかった。
どさり、とベッドに倒れ込む。
びっくりして肺の中の空気が張り詰める。
考える暇もなく、キングが馬乗りになって両手首を抑え込んだ。
脇腹の隣にキングの膝が沈み込むのを感じながら、同時に彼の顔が近付いて唇が重なった。
驚いて、息をすることもままならない。
視界にはキングの顔が近すぎて、ぼやけて映った。
唇の感触がやけに強烈に脳に刺激を送ってきて、キスしてるんだ、と自覚させられる。
下唇をはむはむと彼の唇で咥えられると、その度にどきどきして目元に熱が集まるのが分かった。
ぺろりと唇を彼の舌が舐め上げる。
思わず、う、と声が漏れた。
これで一旦落ち着いたかな、と思って油断していると、今度はさらに深く口付けるように唇が重なり、彼の舌先が唇の割れ目にぐいぐいと差し込まれてきた。
呼吸が苦しくなって、張り詰めていた息を思わず吐いてしまったところに、ぬるり、と熱い舌が潜り込んでくる。
歯列をぬらりとなぞり、舌の腹をぺろりと舐め上げた。
思わず漏れてしまった吐息が彼の顔に掛かって、ひたすらに恥ずかしい。
私の舌を絡め取ろうと口内を蹂躙した彼の舌は、満足したのか、私の下唇を、ちゅ、と吸い上げたあと離れていく。
ほ、と息を吐いたところで、彼が私の耳元に顔を寄せた。
耳たぶを口に咥えられる。
熱い吐息が耳に掛かって、背筋がぞくりとした。
耳たぶを甘噛みされて、じわじわと快感が押し寄せてくる。
耳の軟骨にたまに、コリ、と歯が軽く当たるのが、腰に響いた。
じわじわと、ぞわぞわと、言いようのない熱が快感が支配していく。
彼の手がするすると胸を腹を腰を撫でていき、もうだめだ、と思った時。
どさり、と彼の頭が私の胸元に圧し掛かってきて、どきり、とした。
お腹あたりにも彼の体重を感じて、その重さに愛しさを覚えて鼓動が早まる。
そうして次の彼の行動を待っていたが、なかなか動かない。
不思議に思って、

「キング?」

と声を掛けてみると、すー、と心地良さそうな寝息が返ってきた。
なんなのよ、もー、と声に出して言ってみても彼は簡単には起きないようだった。
中途半端に終わってしまってがっかりはしたものの、ほんの少し安心もしているわけで。
身体全体に感じる彼の体重が愛しくて、可愛くて、思わず微笑んだ。
慎重に頭を撫でると、猫っ毛のキングの髪がさらさらと指の間を通り抜ける。
普段あまり触らせてもらえない彼を自由にできる、ということに思い至ると、これはこれで美味しい状況なのかもしれない、と嬉しくなった。



窓から差し込む朝日に、意識がふんわりと覚醒していく。
ぼんやりとした頭で昨夜のことを思い出してから、隣へと目を向けた。
大人しく寝息を立てているキングが、子供みたいで可愛らしい。
ふふ、と思わず微笑んでから、彼の頬を優しく撫でる。
ぴくり、と彼の眉間に皺が寄って、ゆっくりと瞼が開かれる。
ぼんやりとした虚ろな目が見開かれたまま、ゆっくりと口が開いていく。
そして徐々に驚きの表情へと変わり次第に顔が青ざめる。
その様子を見守っていると、キングは勢いよく布団を撥ね退けて流れるような動作で土下座をした。
驚いて目をぱちくりさせていると、

「ほんっとうに、ごめん!」

と大声で謝られてしまった。

「ええっと、その、昨日は、あの、バンが、馬鹿みたいにバーニャエールを呑ませるから、」

しどろもどろになりながら、何とかして言い訳をしようとしているようだ。
その様子を眺めていると、どうやら未遂に終わったことは覚えていないらしい。

「…昨日のこと、覚えてないの?」

「…ッ!いや、その、覚えていないというわけじゃ、いや、えっと、覚えていないと言われればそうなるというか…」

焦って饒舌になるのが面白い。
そして、覚えていない、というのは非常に都合がいい。

「キング、顔上げて」

そう言ってキングが顔を上げて視線が合うのを待ってからにっこりと笑い掛けた。

「責任、取ってくれるよね?」

しばらくは、良いおもちゃになりそうだ。




 
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