マジックハーフとドラゴン退治?

□旅人と脱走者
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「やっと首都に到着、かあ」

海にぽつんとうかんだ大陸のまん中。
首都と呼んだその町の入口に、一人の少年が立っていた。

年は15、6歳くらいだろうか。

海色の目を輝かせ、少年は大きく息を吸い込んだ。

「さあて、まずは今日の宿探しだ」

ここは大陸のほぼ真ん中に位置する、いわば首都と呼ばれる国の心臓に位置する町だ。
普段ならば、貿易や商売などで大変な賑わいを見せている。
が、今は

(さすがに、あのドラゴンの影響はでかい、か)

人々の顔は皆、どこか影を帯びていた。
露店に並んでいる商品も、あまり見栄えがいいとは言えない物ばかりだ。

「せっかくの首都もこう沈んでちゃつまらないよなあ」

その理由は少年も知っている。数年前、いきなり現れた竜の種族の青年のせいだ。
 

竜の種族は他のどの種族よりも、戦闘においてはたぐいまれなる才能をもつ一族だ。普段は温厚ではあるが、一度その怒りを買うと、町一つを滅ぼすとまで言われている。
そのため、彼らは他の種族からは敬遠される節があった。
それを自覚してか、竜の種族は他の種族から、一歩引いた立場に身を置くようにしていた。彼らは普段は人の形をしているが、本来の姿は、山ほど大きく、巨大なトカゲのような姿をしているという。

本来の姿に戻った竜の一族を、人々は「ドラゴン」と呼ぶ。
 

そのドラゴンの一体が、数年前、理由もなく町や村を襲うようになった。当然、竜の種族はもちろん、他の種族もそのドラゴンを押さえようとやっきになった。しかしその全てが無残な結果となり、終わった。それからもドラゴンは暴れ回り、今では国同士の貿易などが止まる始末。おかげで、大陸一と言われている首都もすっかり活力を失っている。

「ほんと、ドラゴンには困ったものだよなあ」

全然困っていない口調で。少年はのんびりとつぶやいた。

「あ、でも、そのせいで宿代が値上がりしてたら嫌だな」

途端に、顔から血の気が引いて行く。彼にとっては、大陸よりも自身の生活のほうが大切ということらしい。

「そうとなれば、前回泊まった宿を探しだして・・・」

彼が足を速めた時

「ん?なんか騒がしいな」

前方が、何やら騒がしくなっていることに気づいた。

「どいてどいてどいてーーーー!!!!!」

騒がしい人の塊を切り裂くようにして、甲高い声が響いた。
少年に向かって、なにか金の固まりのようなものが弾丸のように走ってくる。

「どいてどいて!! 
邪魔だよーー!!」

「へ?」

ごちんっと、鈍い音がして少年のオデコに鈍い衝撃がはしった。
受け身も取れずに彼は飛び込んできた物体と共に地面に叩き付けられる。


「――――――っっ」

背中に走った衝撃より、頭部へのダメージの方が大きかったらしく、彼は頭を抱えて声にならない悲鳴を上げた。
と、その横で

「いっっっったあああああ!!!」

こちらも派手に転んだらしい。
唸るように叫びながら、金の物体がゆらりと起きあがる。そして

「ちょっと、どいてって言ったのに、なんでぶつかってくんのよ!?」

(いや、ぶつかられたのはこっちだから!)

痛みをおさえつつ、顔を上げて相手を睨みつけた時

「お待ちください!」

「いたぞ!こっちだ!」

どかどかと土煙を盛大にあげながら誰かが迫ってくる。

「うわっやっばい!」

金の物体は、慌てたように立ち上がる。

「もう、あんたのせいで追いつかれちゃったじゃない!」

言うだけ言って走り出そうとした時

「ふべっ!?」

ぶつかった際に転がった少年の荷物に足を引っかけ、本日二度目の転倒。
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