マジックハーフとドラゴン退治?

□討伐者と護衛
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場所は変わって大陸の東側。
とある農村に、一人の少年が立っていた。
真っ黒な短髪に、夕日色の瞳。黙っていると、どこかに消えてしまいそうなくらい、ひどく静かな雰囲気をまとっている。
しかし、畑ばかりの景色には少し浮いた感じの綺麗な格好は、村民の視線を集めていた。
当の本人は気にしていないようで、何をするでもなくぼんやりしている。

「アルフィアさん」

澄んだ高い声がして、アルフィアと呼ばれた少年は振り向いた。

「シズク、用はもう済んだのか?」

見た目を裏切らない、落ち着いた低めの声。

「はい、まあ、一応・・・」

シズクと呼ばれた小柄な少女は、歯切れの悪い返事をした。
心無し表情もあまりいい色をしていない。
年は少年と同じく、15、6くらいだろうか。透き通るほど白い肌に、新緑色の瞳をしている。腰までのびた、少しウェーブのかかった銀髪が、太陽にあたりきらきら輝いていた。顔の両脇からは、特徴的なとがり気味の耳が生えている。どうやら、エルフの少女らしい。

「なにか、あったのか?」

黒髪の少年は、無表情で首を傾げる。

「はい、あの・・・」

「どうしたんだ?」

「その、今連絡がはいったんですが、どうやらシルフィアさんが護衛から逃げ出したようなんです。」

しばしの静寂。

シズクは、なにも言わない彼を恐る恐る見上げた。


「はあああ・・・・・」

深い深い、心底呆れたようなため息が聞こえた。見れば少年は右手を額にあて、沈痛な面持ちをしている。

「さっそくやらかしてくれたんだな。
あのバカは」

「あ、あの、アルフィアさん」

おろおろと気の弱そうな顔になる彼女に、彼は

「シズクが気に病むことじゃない」

すぐに元の無表情に戻った。

「まあ、予想の範囲内だ。
なにかやらかすとは思っていたからな」

けだるそうに頭をかき、頭一つぶん低い相手を見下ろす。

「それに、放っておいても特に問題はないだろう」

「しかし、命令違反になるのでは・・・」

不安そうなシズクに少年は優しく言葉を返す。

「大丈夫だ。
あいつは、ドラゴン退治には絶対くるよ。」

「なぜ、そう言い切れるんです?」

「勘、かな」

言いいながら、彼は村の出口に向かって歩き出した。

「とりあえず、首都で合流しなくてもよくなったんだろ?
なら、こっちもこっちで好きにやるさ」

「待ってください!アルフィアさん!」

ぱたぱたと、シズクは慌てて少年の後を追う。隣に並んだところで、少年はそういえば、と口を開いた。

「俺の名前、前も言ったけど、アルフィアって長いからアルフとかアルでいいよ」

言われて少女はそうでしたと口に手をあてる。

「では、アルフさん」

「さんもいらない」

「そうでしたね。では、アルフ、とりあえずドラゴンの情報を集めるために、大きめの町か村を目指しましょう」

「わかった」

とある小さな村を、ハーフとエルフの二人組が、あとにした。







◆◆◆


西の塔にいるハーフは、東の塔の片割れと違って、ひどくおとなしい。
 
感情そのものをめったに周りに見せることはなく、それがかえって、周囲の者には不気味に見えていた。
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