マジックハーフとドラゴン退治?
□少年と疾走
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「そういえば、フィーは何と何のハーフなんだ?」
海沿いの道を歩きながら、アオはずっと気になっていたことを聞いてみた。
「んー?」
数歩先をスッテプを踏むように進むフィーがちらりと後ろを振り向いた。
「知らない」
前の町で買い込んだ旅荷物を背負いなおして、彼は聞き返す。
「知らないって?」
「言葉通りの意味だよ」
少女が跳ねた拍子に、背負っていたカバンがガチャガチャと音をたてた。これはアオが町でフィーにと買った物で、中には同時に買った、着替えなどが詰め込まれている。ふくらんだカバンはどう見ても重そうだが、背負っている本人はいたって身軽そうだ。
「半分はね、人なんだって」
「もう半分は?」
「知らない」
時刻はもうすぐ夕暮れだ。
「なんかね、ボク達を生んだ人間のおかあさんは、ボク達を生んですぐに死んじゃったんだって。
だから、もう片方の親がどこの誰だか、だれも知らないんだ」
フィーはすっと赤い空を指した。
「もしかしたら、今暴れているドラゴンが、そうだったりしてな」
「それ、シャレにならないよ」
アオは想像して、身震いした。
「そうかい?なら、ドラゴン退治をしたら、ボクの半分を見つけに行こう」
くるり、少女は体を反転して、アオの方を向いた。
沈む夕日が、彼女を照らすスポットライトのようだった。
「ボクは、もっともっと色んなものが見てみたいな」
逆光で表情は見えなかったが、アオは彼女が満面の笑みを浮かべているのが容易に想像できた。
「ねえ、アオも一緒に行こうよ!」
この少女にとっては、自分の半身がなんであるかなど、どうでもいいのだろう。
「でも、兵士の人たちがフィーを追いかけてるんじゃない?」
アオが言うと、途端にフィーは顔をしかめた。
「なら、どこまでだって逃げてやるさ。
走って走って
隠れてまた走って・・・
そうしてボクは世界中を旅するんだ」
フィーはまた体を反転させて、夕日に向かって歩き出す。
「待って、フィー。」
そのまま本当に走って行きそうなフィーに、アオは呼びかける。
「そろそろ日がくれるよ。
野宿の準備をしないと」
ピタッと、フィーの足が止まった。
「そういえばお腹がすいてきたね」
二人のお腹から、盛大に空腹の合図が鳴り響いた。