誰かの話
□誰かの話3
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最初は何に色をつけようか。
魔法使いはペンを片手に考える。
しばらくして
「最初はここがいい」
ひどく子供っぽい笑顔で魔法をかけた。
広くてさみしい空に、キレイな青が広がった。
「どうだい?
綺麗だろう?」
からかうような、鼻歌混じりの問いかけ。
部屋の中では答えてくれないけれど、その中では違った。
ーこれは一体なんだろう?ー
青を知らない住民はひどく驚き、天をあおいだ。
けれど、彼らは誰一人として知らない。
魔法使いがこの世界に来たことを、誰も知らない。