誰かの話

□白黒の視界
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「そういや、本体が燃えるだのなんだの言ってたけど、お前の本体ってやっぱり文章なのか?」

覗き騒動が一段落したところで、アルクは思い出したように聞いてみた。
リオはふてくされたフィアの機嫌を直そうと悪戦苦闘している。

「そりゃ、そうだよ」

部屋の天井スレスレまで浮いていたマオは、アルクの視線があう高さまで降りてきた。

「そうでなきゃ、ボクはどこから出てきたっていうんだい?」

「まぁそうだよな…」

よくわからないことは変わりないが、アルクはとりあえず頷いておいた。

「ようやくボクの存在を信じてくれる気になったかい?」

「まぁ、小指の先くらいは」

わざとアルクがひねくれた言い方をすると

「それだけあれば十分だ」

大して気にしていないのか、あっさりと会話をやめ、空中散歩に戻った。

「…はぁ」

マオが適当なノリなのはいつものこととして、アルクはリオのほうを見た。

腰まで伸びた髪を、頭の高い位置で青いリボンで結んでいる。
フィアに話しかける様子はまるで手のかかる弟の面倒を見る姉だ。

「おい、えっと…フィア?」

確かめるように名前を呼んでみると

「なに?」

青い炎をゆらしながら、ブスッとした顔がアルクのほうに向いた。

「お前も…その、マオと一緒なんだよな?」

アルクが遠慮がちに聞けば

「不本意ながらそうだね」

フィアはマオをにらんだ。

「やめなさい」

姉のような口調でリオが少年をたしなめる。
アルクはといえば、そんなフィアの体をまじまじと見つめ

「すげぇな…全身燃えてるなんてかっこいい、かも」

ポツリとこぼした。すると

「え、そ、そうか?」

フィアは照れたように体をゆらす。
心なしか、炎の揺れも大きい。
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