マジックハーフとドラゴン退治?
□旅人と脱走者
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(うわっいたそー・・・)
オデコを押さえながら、少年は顔面から突っ込んだ相手にほんの少し同情した。
そうこうしているうちに
「やっと追いつきましたよ!!」
二人の前に、先程の足音の持ち主たちが追い付いたようだ。見れば、全員庶民とは思えないような立派な服装をした者達ばかり。腰に剣をさしているところを見ると、兵士か何かだろうか。全員種族は人で間違いないだろう。
「さあ、我々と行きましょう」
そのうちの一人が、少年の背後に優しく語り掛ける。
「お断りよ!!」
むくっと、起きるが早いか、金の固まりは噛みつくようにそう怒鳴った。
「わがままを言わないでください」
「嫌なもんは嫌なの!」
頭の上で行われる訳の分からない応酬を聞きながら、少年は金の物体の姿を始めてみた。
「なんで外に出てまであんた達といなきゃいけないの!?」
綺麗な金色のストレートの髪を腰まで伸ばした少女は良く通る声で、ぶつけるように言葉を投げる。黙っていればまるでどこぞのお嬢様のようにおとなしい外見をしているが、夕日色の瞳はギラギラした光を灯していて、険しい表情からは近寄りがたさを感じる。
「私たちが嫌ならば、他の者を呼びますので・・・」
「だれであろうと嫌だって言ってんのよ!」
少女はバッと、右手を高々と頭上に上げた。
(な、なんだあ?)
途端に怯えたように後ずさりする兵士たち。
少女はその姿を見て、フンっとまるで軽蔑するように鼻から息を吐いた。
「追いつけるもなら、追いついて見なさいよ!!」
地面から引っ張り出したような突風が起こる。
ブワッと不意に巻き上がった風が、少女の来ているスカートを膨らませ
「うわあ!?」
思わず中身を見そうになり、少年は顔を背けた。その時
「風の精霊たちよ!わが身を運べ!
吹きすさべ!!」
ぐあっと、体全体を殴られたような衝撃が彼の体に走った。そのまま、一瞬体が軽くなったかと思えば
「いってえ!!」
べしゃっと、鼻を地面に打ち付けた。
「くうううう・・・・っ!?」
何が起こったのか分からす、とりあえず悲鳴を上げるのを押さえる。と
「あ、ごめん」
「グハッ!?」
上から落ちてきた物体に、哀れ少年は押し潰された。
◆◆◆
「一体全体なにが起こってるんですか!?
あなた誰!?」
騒がしかった首都の賑わいはどこへやら、草原の真ん中で、少年は叫んだ。
目の前にはあぐらをかいて、どうにも面倒くさそうにしている少女が一人。非常に女の子らしい格好をしているにも関わらす、全く女の子らしさがでていない。年は少年とおなじくらいだろうか。
「あー・・・そんなに騒がないでよ
ていうか、なんであんたまでここにいるのよ」
「それはこっちのセリフです!
いきなりぶつかっておいて、おまけにこんなわけのわからないところに連れてきて!」
幸いなことに、彼の旅荷物はあらかたあるようだが、それでいいというものではない。
なんだか面倒事に巻き込まれた予感がする。
当たってほしくない予感が少年の頭の隅にちらつく。
それを否定するためにも、今はとにかく状況を整理しなければなにも始まらないのだ。
「だって、あたしもまさかあんたまで連れてくるとは思わなかったんだもん」
唇を尖らせ、少女は反論する。
怒られていることが気に食わないらしい。
それでも一応罪悪感はあるようで
「まあ、ちょっとおおざっぱだったかな、とも思わないでもないけど・・・」
毛先をいじりながら視線をそらす。
「ちょっとどころじゃないですよ!
何をしたんですか!?」
「いや、普通に風の精霊に、ここに運んでもらうよう頼んだだけだけど・・・」
「風の精霊に?」
ふと、少年の顔から怒りの色が少し引いた。
「二人も運ぶなんて、随分と純度の高い魔法石をもっているんですね」
◆◆◆
彼が住む世界には、一般的に魔法と言われる物が存在する。この世界には目には見えないが、精霊がいて、人々はそれの力を借りて、およそ自然では起きえない現象を起こすことができる。ただし、魔法を使うには魔法石という石が必要となる。なぜその石を使うことで魔法を使えるのかは、誰も詳しくは知らない。しかし、石にはランクというものがあり、透明度が高く、美しい物ほど精霊の力を多く借りることができるのだ。
◆◆◆
人二人を丸々違う場所に移動させるとなると、よほど純度が高い物が必要になる。
「けど、そんなもの、どこで手にいれたんです?」
怒りを忘れて、つい聞きたくなってしまうほど、そういう魔法石はレアなのだ。
「そんな石っころもったこともないわよ」
しかし、魔法を使った少女はケロリと少年の考えを否定した。
「え?」
「あたし、ハーフなの。聞いたことない?」