短編
□濃厚クリーム
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銀時はケーキを食べたことを後悔した。
ケーキを食べてから少し経ったあと突然、銀時の四肢に力が入らなくなった。それだけではなく段々と色情のようなものさえ湧いてくる。身体が酷く疼くのだ。
無警戒で高杉の持ってきたケーキを食べてしまったことが原因か、と銀時は高杉を訝しんだ。
「おい高杉!てめー俺になんか盛っただろ!」
「さあな」
ソファーに横になってうずくまり息を荒くする銀時を見下ろして、高杉はくつくつ笑った。高杉のその笑みはあまりにも邪悪で悪魔の笑みのように銀時は思えた。
手も届きそうにもない、高級洋菓子店のショートケーキを銀時の誕生日だから、と高杉がわざわざ買ってきたのが始まりだった。
銀時はそんな、やけに気前のいい高杉を疑っていたのだが。
箱を開けたときに目に飛び込んできた苺の艶やかな赤い光沢と純白の生クリームで視覚を刺激され、甘い匂いに嗅覚が誘惑されてしまう。おかげで高杉に対する疑心などとうに忘れ去ってしまっていた。
それだから銀時は高杉に申し訳程度に1ピースだけ残して、1ホールあったケーキを一気にひとりで食べてしまったのだ。
そうして未だに高杉がその銀時の残したケーキを一口も食べていないことに気づいてやっと状況を理解したのだが、後の祭りである。
「お前はもうちょっと警戒心ってもんをもたねェのか」
「いや、銀さんだって最初は疑ってたよ!?でもあんなケーキの前じゃもうどうしようもねえじゃん?卑怯な手使いやがって!」
「素直に食べたお前が悪い」
普段なら銀時は高杉をぽかすか殴っているところだがそんな気は到底起きなかった。
高杉に盛られたものが銀時の身体全体に回ってきたのだろうか、先ほどよりも銀時の身体の熱が更に高まってきたのだ。
意識していないのにもかかわらず銀時の昂ぶりは質量を増していく気がして銀時は慌てて高杉にばれないように深くうずくまった。
「調子はどうだ」
「どうだ…じゃねえよ…」
銀時の舌の呂律が怪しくなっていく。吐息も官能的なものになる。
「じゃあ銀時、俺ァ忙しいから頑張れよ」
高杉はそんな銀時をほっといて帰り支度をはじめた。銀時は焦る。
「な、なにが頑張れよだよ…人のせっかくの誕生日台無しにしやがって、無責任すぎるよなあ?」
「どうして欲しいんだ?」
高杉は被りかけた笠を外して手に持つ。そうして銀時の言葉を薄笑いを浮かべて待った。
銀時は目を伏せる。
「言わせるつもりですかコノヤロー」
「言わなきゃ俺ァ帰るぜ」
銀時の身体はそろそろ限界が訪れそうだった。発汗量が増えて何もしてないというのに血流という血流がある一点に集中する。
恥を捨てなければおかしくなってしまいそうだった。
「だ、だからさ、責任取ってしてほしい」
しどろもどろな銀時の口調。盛られた媚薬の影響も相まって顔が茹でダコだった。
「何をして欲しいんだ」
「言わなくてもわかるだろ馬鹿杉!」
「帰る」
「すみませんでした」
高杉の裾を引っ張って銀時は高杉を引き止める。訴えかけるような銀時の潤んだ瞳に見つめられて高杉は笠を机に置いてしゃがむ。
そうしてうずくまる銀時と視線をあわせた。
「しかたねェ野郎だな」
「てめーが盛ったんだから…責任取んのは当然だろ……」
銀時の色気混じりの吐息、煽情的な表情。それに高杉がそそられないわけがなかった。