本棚A.s
□暗殺教室A.s 第4話
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「潮田くん、赤羽くん。ありがとうございました」
「ううん。帰り道だったし、萩生さんといろいろ話せて楽しかったよ」
「こちらこそ。とても楽しかったです」
山頂からの険しい道のりを経て、一行は目的地に到着したのだった。
「でも、本当に乗ってかないの?電車来ちゃうけど」
ついさっき、駅に着くと麻耶は唐突に「私はここで残ります」と2人に告げたのだった。
「はい。私は次の電車で行きますので」
「そっか。そうだね、わかったよ」
渚としてはもう少し、彼女と話してを情報をと思っていたのだが。そこで引き留めるほど野暮ではない。引き下がって、ホームへと向かう。
「じゃあね。また明日!」
「はい。また明日」
後ろから見送る麻耶に手を振り返す。構内に入り麻耶の姿が見えなくなると、2人は顔を前へと向き直し改札を通ろうとした。しかし、
「…」
「…?どうかした?カルマくん」
カルマがいきなり歩みを止めた。
「いや。ちょっと…」
「そういえばさっきも結構黙ってたけど…。なにかあった?」
山頂からここに来るまで、カルマは考え込むような表情を繰り返し、渚から振られた話に対する反応がいつもより数秒ほど遅かった。いつもなら普通に話に参加しているのだが…。
「…渚くん。俺少し用を思い出したからさ、戻るよ」
「え?」
渚は不思議に思い問おうとしたが、それはなんとなくカルマに悪い気がした。
「ん…。そっか、わかった。じゃあまた明日」
「うん、また明日」
そういってカルマは元来た方向へ歩いていく。少し見届けてから渚はホームへと足早に向かったのだった。
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カルマが考えていたのはやはり、麻耶のことであった。彼女にはカルマにとって不可解な点が多かった。
(やっぱもう少し話してみないと…)
そう思いながら歩くと、自ずと入り口付近が見えてくる。するとそこには、やはり麻耶がいた。しかし、そこにいたのは麻耶だけではなかった。
「あれは…園川さん、だっけ」
烏丸先生の部下の1人である『園川 雀(そのかわ すずめ)』、彼女の姿もあった。
「すみません。こちらの都合で萩生さんにご迷惑を…」
「いえ。わたしこそずっと迷惑をかけ続けているのですから、気にしないでください」
カルマは少し物陰に潜み、彼女らの会話を盗み聞きする。カルマのいる位置からでもそれは充分耳に届いた。
「ですが本当によろしかったのですか?時間はかかれども、数時間待っていただければ校舎まで迎えに…」
「でもそれではダメです」
麻耶が園川さんの言葉を遮る。そして少し強めに言った。
「それではダメなのです。私の詳細を気づかれてしまうのは…。それは察されたくない、私自ら聞いてもらわなければ」
「…そうですか」
「まぁ。殺せんせーなら、明日になればもう気づいてしまっていたりするかもしれませんが」
そういって麻耶は園川さんに連れられ、烏丸先生のそれに似た黒い車両に乗り、去っていった。
カルマは物陰から出るとぱっぱとホコリを払い、ふぅと息をつく。
「なるほどね。あんたの思ったとおりだよ殺せんせー」
少し上を見上げ、あの黄色い頭を思い出す。
「本当に見えないよ、あの子」