じぇんとるまん
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「ねえ、ウィルソン。今日飲みに行かない?部下がねあなたと話をしたいっていってるのよ」
「えー。そんな気分じゃねえんだけど」
士官学校で同級生だったマリア・ロスの誘いに帰り支度をしながら顔をしかめる。
本当に今日はワイワイと盛り上がれる気分ではない。
「どうせ、恋人もいないんだから家でご飯食べるよりいいじゃない。ハボックも来るって言ってたし」
「ハボックにオレも来るってこと言ったか?」
「言ってないわよ。まだウィルソンを誘ってなかったもの」
ハボックはリュカがなに食わぬ顔で酒の席に現れたら、どんな反応をするだろうか。
まず、気まずい空気になることに間違いないだろう。
「悪い。オレはパス」
「部下はウィルソンに会いたいって言ってのに、本人がパスしてどうするのよ」
「知らねえよ。腹痛とでも何とでも言っとけ。ハボックが来ないなら考える」
「もしかしてハボックと何かあったの?」
自分自身以外で唯一リュカのハボックへの気持ちをしっているマリアはリュカとハボックの関係を一応気遣ってくれている。
「告った」
「え。あなた一生言わないって言ってたじゃない」
「ああ。酒って怖いよな」
これだけで何が起こったか理解したマリアは額を抑え、大きくため息を吐く。
「で、どうだったの」
「沈黙。もう恐ろしいくらいの沈黙。言い逃げしちまったよ」
そう言って自嘲ぎみに笑うと、マリアから憐れみの目を向けられる。
「どっちにしろ、今日の飲み会は参加決定ね」
「行かねーぞ。オレは」
「いいわよ別に、家にいて」
マリアの言葉の真意が分からず彼女を見下ろすと、目が合いふっと微笑まれる。
結局、不可解な言動の意味は分からなかったが、リュカにとっていいことが起こりそうにないのは確かだった。
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