声優
□憧れなのか、恋なのか
1ページ/1ページ
フリー所属になって、早くも3ヶ月が経とうとしている。
フリーは何かと大変だ。
(マネージャーさん居ないから、何から何まで自分でやらなきゃだし)
でも有り難いことに、仕事は途切れなくて。
あぁ、実力が認められてる。
そう思う日も、少なくない。
「お早う御座います!!」
「あ、細谷さん。お早う御座います」
「あれ?夏音ちゃん、今日一緒だっけ?」
「はい。宜しくお願いします」
夏音ちゃんは僕の後輩で、しっかりとした演技をする。
それは、僕の好きな演技の仕方。
僕の方が先輩だけど、何かと尊敬…というか、憧れるとこはあって。
「俺には挨拶ねぇの?細谷君よぉ」
「杉田さん!お早う御座います!」
「真面目か」
1人で色々考えていたら、背後から杉田さんに話しかけられた。
…知ってる人の顔見ると、咄嗟に挨拶しちゃうんだよな。
仕事柄、しょうがないんだけど。
「何、また驫木と話してて、興奮してたの?」
「してませんよ!?」
何を言い出すんだ、この人。
「え?細谷って、驫木が好きなんだろ?」
「……へ?」
何という爆弾発言。
「え、てっきりそうかと…つか、あんだけ驫木を特別扱いしてりゃ、そう思うだろ」
「…特別扱い?」
「まさかの無意識?あいつだけ名前にちゃん付けだったり、話すときずっと満面の笑みで居たら、そりゃそう思うって。あいつが色恋沙汰に疎くて良かったな」
「…へ…」
無意識怖い。
いやいや、でも!!
後輩だけど、憧れだし!!
決して!!
恋の好きじゃなく!!
「…まあ、その『好き』は、本当に後輩への可愛がりとか憧れからくるものなのかねぇ」
杉田さんは、僕の心を読んだように喋った。
「…後輩とか憧れからくるものです」
自信は無かった。
けど、
「いつか答えを出します」
「…あっそ」
杉田さんと約束したからには、本当にそうなのか、調べてやる。