novel


□それでもやっぱり一番は
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童話に出てくるような、大きく高い城の中。


「ハア…ハァ……ッ」


茨に覆われたその城は、100年という年月が経っているからか床や壁が所々欠けている。

そんな城の頂上を目指し、茨の道を掻き分けながらただひたすら階段を上っていく。


「…ハァ………ハアッ……ッ」

「…………」


目的地である頂上に着いたそこには、一人の美女が眠っていた。


「……い、」


美しく整った顔立ち、綺麗な青い髪、細く長い脚…
そのままずっと眺めていてしまいそうだ


「ほ……せ…」


眠り続けてしまう呪いを解くため、ゆっくりとその美女の唇に…

「堀ちゃん先輩!!!!」

「うおっ!!?」




大音量で名前を呼ばれ驚いて前を向くと、鹿島の顔が目に映った


「もうすぐ次の舞台の打ち合わせですけど…先輩、大丈夫ですか?」

目の隈すごいですよ、と言って俺を見る。


「…あぁ、わりぃ……大丈夫だ」


目頭を抑えつつ、机に伏せていた体をゆっくり起こす。

昨日野崎の家で泊まり込みで原稿をしたからか、どうやら疲れて寝てしまっていたようだ。



とにかく打ち合わせの準備しないとな、と
ぼんやりしている頭で立ち上がろうとした時…


「………ん?」


目の前の鹿島の姿が、なぜか…さっきまで見ていた夢と思われる美女と重なった。

寝ぼけているせいだろうか?
いや、でもこれは……



「…?どうしたんですか、先輩」

「鹿島……お前、ヒロイン役とかやってみないか」



「………へ…?」







意外とアリかもしれない。
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