nacs舞台詰め

□『HONOR』 その後
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『HONORその後 五作と千恵・神木にて』

五作は目を覚ました、そこは白い煙に包まれていた。
「ふ、わしは死んでしまったのか…」
目の前の世界をみて五作は自分が死んだことを認知した。
その間に白い煙が段々と引いて行く、そして五作の前にはかつて恵織村の守り木として言われていた白樺の木(神木)がそびえ立っていた。
「ははは、神木様はいつ見ても大きいなー」
五作が見ほれていると白樺の木に寄り添っている女の子がいた。その女の子は髪は三つ編みをしており、服装は上はセーラー服に下はもんぺんをはいていた。五作はその女の子に近づいて聞いた。
「千恵?千恵なのか…?」
五作の予想通り千恵だった。千恵は五作の所に勢いよく向かい、五作を押し倒した。
五作は起き上がり頭を掻く。
「ごめんね、長く待たせちゃって…」
「本当だよな、あたしをこんなにも待たせるなんてさ、五作にしてはいい度胸してんじゃん」
千恵は五作の背中を叩く。五作は痛がりながらも笑っていた。
「五作、あんたおじいちゃんみたいになったね。あたしなんてさ昔のまんま、いいだろ!」
「うん、千恵はいつまでも可愛いよ」
千恵の顔は瞬く間に真っ赤になった。
そんな会話をしていると何処からか太鼓の音が聞こえてきた。下を見てみると恵織村があり、見覚えのある法被をきた3人の男と1人の女が太鼓を叩いていた。
「これって…」
「そうだ、わしらがやっていた祭りだ。ほら、あの法被に見覚えあるだろ?」
千恵は頷き、微笑んだ。
「あれはあたしたちが祭りの時に着てた法被。それにこの太鼓の音、一体どこで…」
すると五作が話し始めた。
「わしが教えたんだ、あのチビどもに。ほれ、あの女みたいなヤツ、あいつはなわしの弟子でな…チビ助にはいろいろ迷惑かけた。そしてあの顔デカは林太郎の孫だ、林太郎みたいなヤツでな、今回の祭りの立役者だ。そしてあのもじゃもじゃは恵織村の寺の住職でな、アイツは最後までわしを面倒を見ててくれた。最後のは建造の孫だ、アイツも建造と同じ花火師になってな。そうじゃ、祭りの最後に上がる花火、あれは建造のだ、きれいにあがるといいが…」
五作の話を聴き、千恵は満足げな顔をして言った。
「なんかあの時に戻ったみたいだ、なんか…泣けてきちゃった」
五作は心配しながら千恵の顔を覗き込む。千恵は顔を隠す。
「あんまり見るな、恥ずかしいだろ…。でもよかった、またこうして祭りが出来てるんだもん」
五作は千恵の手を握り、ずっと言えなかった思いを話し出す。
「わしな、千恵にずっと伝えたかったことがある。わしが来たからには千恵は1人じゃない、もう1人にはさせない。そして、わしは千恵のことが…」
千恵は五作の手を離し、頷く。
「分かったから、五作の気持ちは充分伝わったからさ、これ以上、女を泣かせるな」
五作は千恵の肩を掴み、真剣な顔をした。
「でも!これだけは言わしてくれ!わしは千恵のことが好きじゃ…大好きじゃ…」
そう言う五作の手は震えており、今にも泣きそうな表情をしていた。千恵は少し笑い、五作に抱きついた。
「ばか…。あたしも五作のこと、好きだぞ…大好きだぞ…」
その言葉を聴き、五作は笑顔になる。その時、花火の音が下で鳴り響いた。
「上から見る花火も悪くないな、五作!」
「うん、きれいだ」
千恵は五作に手を差し出した、五作は照れながら千恵の手を握る。
2人はこれから離れることはない。だから今度は絶対、1人にさせないと五作は改めて誓った。

終わり。

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