nacs舞台詰め

□『COMPOSER』最初の絶望協奏曲
1ページ/5ページ

サリエリは棺桶に入れられたモーツァルトを見つめる。
モーツァルトは棺桶の中で眠っていた。モーツァルトの周りには、白い薔薇が一面に置いてあった。
(ああ、モーツァルトよ。お前は死んでも何故、そんな顔をしているんだ…?)
眠っているモーツァルトは苦悶な表情をしている。
(あの時、私は何故お前のそんな顔に気がつかなかったのだろう…)

2日前
雪が降り始め、一気に冷え込んだあの日の夜。モーツァルト、お前は突然、私を呼び出したな。
「おいー、どうしたモーツァルト!こんな時間に呼び出して」
あの時、お前は今と同じ顔をしていた。
「いや…、もうすぐ新しい曲が書き終わりそうなんだ。だから最初はサリエリに聞いてもらおうと思ってな」
そう言ったお前は客間へ案内し、ここで待つよう私に言いお前は部屋を出たな。
それから私は待ちきれなくて、音を立てないようにお前の部屋に向かった。
その時、ピアノの音が微かに廊下に流れてきた。部屋の前に着いた私は、ドアに耳を立ててその音を聴いた。
その音はこの世の『絶望』を奏でているようだった。
「大丈夫なのか、モーツァルトは…?」
私はこの奏でている音を聴き心配になった。
「そんな所に居りますと、お風邪を引いてしまいますよ?サリエリ先生」
不意に後ろから聞こえた声に私はドキッとした、そして後ろを振り返る。
するとそこにはモーツァルトの妻、コンスタンツェがにっこり笑いながら立っていた。
コンスタンツェは娼婦でありながら気遣いがよく、誰もが惚れ込む美人であった。そんなコンスタンツェは私に肩に毛布を掛けてくれた。
「ありがとう、コンスタンツェ」
「いいえ。さあ、そんな所で待って居られず、暖かい暖炉がある部屋へ。珈琲もご用意しますわ」
そして私はさっきまで居た部屋に戻った、そして珈琲を用意された。コンスタンツェは微笑み部屋をあとにした。
私は目が覚めた。いつの間にか私は深い眠りに入ってしまっていたようだ。時計を見るとあれから2時間以上経っていた。
私は冷たい空気を吸いがてら、お前の部屋へ行こうと考え部屋を出た。
廊下の冷たさは今の私にとって心地よいものだった、また私は音を立てないよう部屋に向かう。
すると、さっきまで微かに流れていたピアノの音は聴こえてこなかった。部屋の前に着いた私はドアの前に立ち、また耳を立てて中の音を聴いた。
しかし、中からピアノの音は聴こえてこない、と言うか中の足音すら聴こえない。
(モーツァルトは曲を完成させ、寝てしまったか?しかし来客を待たせているのにそんな失礼なことをするだろうか?まあ私も寝てしまい十分失礼なんだが…
それに曲が完成したならば、すぐさま私を起こしにくるはずだが来なかった…)
この時、私の中で嫌な予感がした。
私はドアノブに手を伸ばし回したが、やはり鍵が掛かっていた。丁度そこにコンスタンツェがやってきた。私はコンスタンツェに鍵を取りに行ってもらうように言い、鍵を持ってきたコンスタンツェにお礼を言い、鍵を開け部屋に入った。
そこは本棚、机、ベッドなど端っこに置いてあり、真ん中には大きなグランドピアノが置いている。お前はそのピアノの横で倒れていた。
「おい!モーツァルト?どうした?」
私はお前に近づき、うつ伏せになっていたお前を起こした。
お前は口から血を流し、苦悶の表情で体が冷たくなっていた。

その後、医師の判断で毒物の中毒死だと言うことがわかった。
警察はこの時、屋敷内に居たサリエリ、コンスタンツェの2人を第一容疑者として明日、聴聞会を開くことになった。
そしてモーツァルトが埋葬される、サリエリは土に埋もれてゆくモーツァルトの棺桶を見て呟く。
「モーツァルト。お前はあの時、何を思い、何を完成させようとしていたんだ…?」
勿論、その答えは帰ってくるはずはなかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ