nacs BL詰め

□さよなら愛しい人
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「ねぇ琢ちゃん?琢ちゃんは僕を抱ける?」

顕さんは笑って僕に問う、僕は驚きを隠せなかった。

「…わかんないなー…」

僕は頭を掻きながら答える、でもこれは僕の本当の答えじゃない。

「そっか…」

なんでそんな悲しい顔をするんだよ…
僕の本当の答えは、抱けるに決まってるだろ!
僕はあなたのことを…あたなのことが好きなんだから、愛しいと思っているんだから!
本当はそう答えたかった。でも、今の関係が壊れるのが嫌で…、リーダーが好きな顕さんを傷つけたくなくて…
あぁ、また言い訳作ってる。
なんで顕さんに本当のこと、伝えられないんだろう…
何回、こんなことで、悩んでるんだろう?
段々、腹が立ってきた。

「音尾?大丈夫か?」

顕さんが心配して、僕の顔を覗きこんだ。
顕さん、今はやめてよ…。俺、今むしゃくしゃしてて…

「モリに抱いてもらえばいいじゃない?」

僕は無意識でその言葉を言ってしまった。

「あ、ご…ごめん!」

すぐ謝ったが、顕さんは俯き自分の前にあった日本酒を呑む。
地雷を踏んでしまった…と後悔しても遅かった。
と思った次の瞬間、顕さんは僕に飛びついてお腹に顔を埋めた。

「だって…、だって。モリは…忙しいからって…」

顕さんの声で泣いてることがわかった。

「俺も、確かに…確かに忙しい…でも…でも!モリはもっと、忙しいみたいで…今日だって、これから会う…会うはずだったのに…!」

顕さんはそう言いながら、僕の太ももを叩く。

「顕さん…」
「断られたときに、丁度、音尾とあって…、それで…」

なるほど、だから呑みに誘ったのか…

「顕さん、本当に抱いていいの?」

顕さんは泣き顔のまま、僕を見て小さく頷いた。
その顔は本当に可愛くて愛しかった。

「顕さん、それじゃあ浮気になっちゃうけどいいの?」

顕さんはなにも言わないし、頷きもしなかった。

「じゃ、もうちょっと呑んでからにしよっか?」




それから何時間たったんだろう?顕さんは酔いつぶれ、隣で眠っていた。

「可愛いなー」

僕は顕さんの頭を撫でる。
大学時代から思っていた、寝ている顕さんは可愛すぎると。
それから、呑み屋を後にし外に出る。
そこは暗くても星が輝いて見えた。
僕は顕さんが泊まるホテルへと顕さんを担いで連れていった。
部屋に着き、ベッドに寝かせた。
その時、顕さんに言われた一言を思い出す。

「ねぇ琢ちゃん?琢ちゃんは僕を抱ける?」

僕は寝ている顕さんを見つめる。
さっき抱いてもいいか?と聞いた時、頷いたよな…だったら。
僕は顕さんにキスしようとしたとき、また顕さんは泣いていた。
そして呟いていた。

「モリ…モリに会いたいよ……」

この時に僕はわかった。いや、元々わかってはいた。
顕さんは僕じゃなくてリーダーを見ている。
僕なんて眼中にないのに、僕を誘うなんて…というかそれに、そんな小さすぎる可能性にすがった俺って…。

「ズルいよ…ズルすぎるよ、顕さん…」

その時、僕の目から涙が零れた。
そしてダムが決壊したかのように溢れ出る。
なんで、届かないんだろう?なんで、叶わないんだろう?
なんで、あなたを好きになってしまったんだろう…?
今まで思っていた想いが涙として出ていく。
その涙をバレないようにと誤魔化す、誤魔化しながらどんどん出ていった。




泣き疲れた僕は隣にいる顕さんを見る、顕さんの涙もいつの間にか止まっていた。
僕は顕さんの手を取り、キスをした。

「さよなら、僕の愛しい人」

僕はそう言い残し、顕さんの部屋を出た。



さよなら、僕の愛しい人。今度は友人としてまた会おうね。


END

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