絵本の世界と魔法の宝玉! First Season
□再来!
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翌日。
バレー部内で行われた練習試合にて、みゆきとあかねの特訓の成果は花開いていた。
星空みゆき「日野さーん! 頑張ってー!」
みゆきの声援に、あかねは手を振って応える。
試合が始まり、あかねは今まで以上の行動力でボールを追い掛け、次々とボールを相手のコートに叩き込んでいった。
日野あかね「よっしゃぁ!」
星空みゆき「おぉッ!! 日野さんッ、凄〜いッ!」
この状況に歓喜するみゆきであったが、あかねちは逆に歯噛みする者だっている。
あかねだけがエースアタッカーを目指して努力しているわけではない。
他の部員だって同じくらい努力して、同じ気持ちで頑張ってきて。
そして今、昨日のあかねと同じように悔しい気持ちを抱いているのだ。
名倉ゆか「………ッ…」
あかねより実力は上だと思われていたゆかも、その内の一人だった。
名倉ゆか「…あかね……。昨日とは別人だ…」
昨日今日という短い時間で、目に見えるほど圧倒的な腕前の強化など出来るはずがない。
だからこそ、ゆかはあかねが何故ここまでバレーの腕を一日で上げたのかを理解していた。
ただ特訓して、練習を積み上げてきただけではない。
名倉ゆか「…………」
ゆかは、応援席からあかねに声援を送るみゆきに視線を向けた。
その予想は的中している。
友達から送られる精一杯の声援。
心の底から送られてくる純粋な力の支えが、あかねのモチベーションを大きく跳ね上げたのだ。
名倉ゆか「(ここまで頑張ってきたんだから……あたしだって負けたくないッ)」
両頬をパシンッと叩いて喝を入れると、ゆかはあかねと再び対峙した。
みゆきたちが座る応援席からの声援を受けながら、エースアタッカー争いの部活動は続いていく。
結果から述べれば、やはり実力差は浮き彫りになるというものだろう。
あかねのチームは敗北し、ゆかのチームが勝利を掴んだ。
日野あかね「あ〜ッ、負けた負けた! やっぱ向こうのチームは強いわなぁ」
星空みゆき「でも一点差だよ? あかねちゃんだって頑張ったんだもん。次はきっと勝てるよ!」
日野あかね「にしし、せやな〜」
しかし、昨日の部活中に見せていたような悔しそうな表情は、今のあかねに見受けられない。
むしろみゆきの隣りで、負けたことなど何でもないかのように笑顔を作って笑っていた。
名倉ゆか「…………」
その様子を見て、ゆかはどう思っただろうか。
負けたのに悔しくないのか、と疑問を持っただろうか。
みんな真剣にやっているのにあかねは違うのか、と憤慨しただろうか。
しかし、それらの答えを問い詰めるようなこともなく、ゆかは休憩のために水道へと向かった。
何を情緒不安定になっているのか、自分でもよく分かっていない。
名倉ゆか「疲れてるのかな………うん…。きっとそうだ……」
努力を自慢する気はないし、努力するのは当たり前だ。
きっと自分もあかねも、そして他の部員たちだって当然のように行ってること。
しかし、その努力が思い描いた未来まで結び付かない現実を目の当たりにするのは……つらかった。
と、そんな時だ。
名倉ゆか「……?」
不意に、水道近くの体育倉庫が気になった。
他とは妙に空気が逸しているというか、目に見えない雰囲気が自然と漂っているというか。
とにかく、言いようのない気持ちが湧き上がってきて消えようとしないのだ。
名倉ゆか「……何…? 誰かいるの…?」
気付けば足が動いていた。
体育倉庫の前に立ち、その重い扉を横に引いて開けてみたものの、倉庫の中には誰もいなかった。
無造作だが、見栄えだけは壁沿いに並べられている体育道具の空間。
しかし、そんな状況下で目を引き物ならば、確かにそこに存在していた。
名倉ゆか「……なに…これ…」
大きさはビー玉より小さく、パチンコ玉と同じかそれ以上に小さな玉だった。
輪郭が半透明で、玉の中心はオレンジ色に光り輝いている。
日野あかね『ゆかー? 何処行ったん?』
名倉ゆか「……ぁ」
体育倉庫の外から、ゆかを捜しているあかねの声が聞こえてくる。
どうやら休憩時間が終わりを迎え、再び練習が始まるらしい。
ゆかは、何となくその玉を置いていくことが躊躇われたため、そのままズボンのポケットの中に入れてしまう。
その後、体育倉庫を後にすると何でもない様子のままバレー部の活動を再開したのだった。
同時刻。
七色ヶ丘中学より少し離れた場所にて、ルプスルンが宝玉発生の気配を感じ取った。
ルプスルン「プークスクスクスッ!!!! 来たぜ来たぜッ、宝玉だッ!! 今度こそ確実に破壊してやらぁ!!」
それほど距離も離れていない。
この調子では、宝玉の発生地点へと最初に足を運ぶのはルプスルンかもしれなかった。
同時刻。
七色ヶ丘中学から随分と離れた場所にて、ウルフルンたちも宝玉発生の気配を感じ取った。
ウルフルン「……ッ! この気配はッ」
フランドール「宝玉が現れたみたいね」
バットパット「…これは………まさか、七色ヶ丘中学!?」
寄りにも寄って、今日に限って七色ヶ丘中学から離れた場所を探索していた。
九人(ニコと魔王を含めて十一人)が手分けして七色ヶ丘市の全体を探索していると言えども、死角もない完全な探索など不可能だ。
今、七色ヶ丘中学に最も早く駆けつけられる者の行動は期待しない方がいい。
ウルフルン「チッ! 急いで戻るぞッ。ヤツらに先に壊されちゃ、堪ったモンじゃねぇ!」
また、ウルフルンたちは移動手段としてふしぎ図書館を行使することが躊躇われていた。
応用次第では通路としても機能できるが、所詮あれは仮の住居。
それに、本棚から本棚を結び付けることしか能がないため、関係ない一般人の目に触れてしまう可能性もあったのだ。
今は全速力で飛んでいくしか駆け付ける術がない。
バットパット「わたくしたちが到着するよりも早く、フライラインが気付いてくれるといいのですが……」
フランドール「期待しない方がいいわ。宝玉を取り込んでいても、結局は人間。宝玉発生の気配を感じ取ることはできない」
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