絵本の世界と魔法の宝玉! First Season
□燃え盛る力!
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緑川家で昼食をご馳走になったみゆきは、なおの弟妹たちの遊び相手も継続した。
現在は弟妹たちを連れて河原まで遊びに来ていた。
もちろん、なおも同行している。
緑川なお「星空さん。みんなの面倒見てくれて、ありがとね。片付けまで手伝ってもらっちゃって」
星空みゆき「ううん。こちらこそ、お昼ご馳走様。美味しかったぁ〜」
みゆきとなおは、サッカーで遊んでいる弟妹たちを遠巻きに眺めながら、腰を下ろして会話を交わす。
元気いっぱいな弟妹たちの相手役として、時には休憩も必要だろう。
星空みゆき「緑川さん偉いなぁ〜。弟妹の面倒、ちゃんと見て」
緑川なお「そんなの当たり前だよ、一番上のお姉ちゃんだもん。それに弟たちと一緒にいると、楽しいし」
河原で駆け回る弟妹たちを眺めながら、なおは幸せそうに呟いた。
緑川なお「あたし…家族が大好きなんだ……」
星空みゆき「緑川さん…」
と、その時だった。
二人の姿を見つけ、足早に駆け寄ってくるあかねとやよいが現れる。
日野あかね「おーい! みゆきー、なおー」
緑川なお「…え? あかね…。やよいちゃん…」
これは偶然ではない。
緑川家から河原に遊びに来る際、みゆきがあかねたちに連絡を入れていたのだ。
星空みゆき「わたしが呼んだの。みんなで遊べば、もーっとウルトラハッピーかなぁ、って♪」
緑川なお「……ありがとうッ、星空さん」
これで九人。
河原で遊ぶ面子の賑やかさも、グンと増したことだろう。
そんな河原のすぐ蕎麦の茂みにて、持ち前の大きな体を隠している者がいた。
アカオーニ「オニぃ〜……。何でこんなところで遊んでるオニ……」
つい先ほど発現したばかりの宝玉を回収するために行動を起こしたアカオーニ。
何と、その発生源はみゆきたちのいる河原の何処かで起きたようだ。
アカオーニ「みゆきたちは俺様を知ってるし、宝玉の事情も分かるオニ…。でも、あんなに小さい子たちまでいたら宝玉探しどころじゃなくなるオニ…」
アカオーニは自分の姿の恐ろしさを自覚している。
元より“鬼”とは恐れられる対象なのだ。
なおの弟妹たちがアカオーニを見れば、もはや怖がって当然だろう。
アカオーニ「むぅ〜……。人の気も知らないで……あ、いや……鬼の気も知らないで、楽しそうに遊びやがってオニ〜」
ついには、行き場のない小さな怒りを抱え始め、茂みの中で一人ブツクサを文句を呟き始める。
そうして声を出したことが、今の立場を危うくしてしまったのかもしれない。
黄瀬やよい「…? 誰かいるの…?」
アカオーニ「へ?」
黄瀬やよい「え?」
アカオーニの存在に気付かないまま、やよいが偶然にも傍まで近付いてきていた。
そしてアカオーニも河原で駆け回る子供たちの方に意識が向いていたため、やよいの接近に気付かなかったのだった。
両者、互いの存在を認めて硬直。
黄瀬やよい「ーーーッ!!? きッ」
アカオーニ「(わーッ! わーッ!! ストップッ、ストォォォップッ! ここで叫んじゃダメだオニぃッ!!)」
黄瀬やよい「むぐぐッ!!」
アカオーニは、思わず叫びそうになったやよいの口を押さえ込み、そのまま茂みの中に引きずり込む。
河原の様子を再確認してみると、どうやら気付かれなかったようだ。
アカオーニ「ふぅ〜、危機一髪オニ……」
黄瀬やよい「むぐ! むぐぐぐ〜ぅぅッ!!」
アカオーニ「ん? あッ!! ごめんオニ!」
いまだに押さえ込み続けていたやよいを解放すると、やよいは茂みの中で静かに呼吸を整えていく。
咳をしなかっただけ頑張った方だろう。
黄瀬やよい「え、えーっと……あ、アカオニーさん、だっけ…?」
アカオーニ「む? 俺様は“アカオーニ”オニ。何で名前知ってるオニ?」
黄瀬やよい「え、えーっと……星空さんたちから、聞いてて…。それで、こんなところで何やってるの……?」
正直な話、やよいはアカオーニを怖がっている。
しかし、みゆきたちから少なからず事情を聞いていたことと、とりあえず危害を加えるような悪人ではないことは理解していた。
そのため、初めて会った時より随分と印象は変化していたのだった。
一方その頃。
河原で遊んでいる最中、緑川ひなは川辺に転がる小さな玉を見つけた。
緑川ひな「……?」
手の平に収まるほど小さな玉は、その中心が黄色く輝いていて、まるで宝石のように綺麗だった。
緑川ひな「…何これ…きれ〜い♪」
それが、みゆきたちやアカオーニが探している宝玉だと知らず、ひなはそれを持ったままみんなのところへ戻っていった。
その様子を、河原の上空に到着した一人の青鬼に見られていたとも知らずに。
アカオーニは、やよいが絵本の世界のことや宝玉回収の件を少なからず知らされていることを聞かされた。
実際に見たり行ったりしたわけではないため、その解釈は少し異なる部分があったものの、詳しく説明する手間が省けたのは大きかった。
今現在、早急に対応しなくてはならない事態が起きているからだ。
黄瀬やよい「え!? 宝玉がこの近くにッ!?」
アカオーニ「間違いないオニ。俺様、それの回収に来たんだオニ」
しかし、アカオーニ自身に動き出そうとする様子がない。
自分の姿の恐ろしさは言うまでもないだろうが、それとこれとは話が別だ。
故郷の世界を一刻も早く救わなければならないのに、アカオーニが別の何かに気に掛ける必要など何もないはずだった。
黄瀬やよい「探さないの…? そりゃ、なおちゃんの弟たちは怖がっちゃうかもしれないけど、宝玉探しは重要なことなんでしょ?」
アカオーニ「…子供を怖がらせるのは……、何か嫌オニ…」
黄瀬やよい「え…?」
アカオーニ「俺様、人間から嫌われたくないオニ……。だから今すぐ外に出て宝玉を探すのは…ちょっと嫌オニ…」
黄瀬やよい「……アカオーニ」
それは、人間が好きな性分が働いた自制心だった。
そんな一面を目の当たりにし、その心情を知ってしまった以上、やよいも引くに引けなかった。
そして、例え何の力もない部外者であったとしても、この程度のことなら協力することができる。
黄瀬やよい「…じゃあ、みんなに場所を移ってもらうよ。今度は他の場所に遊びに行こう、って言えばきっと大丈夫ッ」
もし上手くいかなかったとしても、みゆきとあかねに宝玉のことを伝えれば、遊びに乗じて宝玉を探してくれるはずだ。
河原といえども範囲はある。
この近くに確実にあるものならば、そう長い時間を有せずとも見つかるだろう。
アカオーニ「…お、お願いして大丈夫オニ……?」
黄瀬やよい「う、うん…任せて……ッ」
少しだけ緊張気味のようだったが、ここはやよいに任せるしかない。
そう思っていた、次の瞬間……。
空より、青鬼の強襲が迫り来る。
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