絵本の世界と魔法の宝玉! First Season

□れいかの仕事
1ページ/4ページ


 やよいとなおが絵本の世界の事件に協力する姿勢を見せた、翌日。

 日曜日の今日、ふしぎ図書館にはみゆきたち四人の姿があった。

日野あかね「みゆき、肩は大丈夫なん?」

星空みゆき「う〜ん……まだちょっと痛いんだよね…。それに、何か体も怠いし…」

黄瀬やよい「わたしのために…ごめんね、みゆきちゃん…」

星空みゆき「ううんッ、気にしなくて大丈夫だよ!」

 回復しているものの、まだみゆきは車椅子を使用している。

 既に歩くことは難しくないのだが、両肩の脱臼という痛みを伴っているため無理はさせられない。

緑川なお「絵本の世界……ふしぎ図書館……。夢じゃなかったんだ……」

 そして……なおは現在、ふしぎ図書館の幻想的な光景を眺めている。

 昨日の出来事を、弟妹たちに何とか夢物語だと言い聞かせた反面、もしかしたら本当に夢の出来事だったのでは、と思っていたのかもしれない。

 そしてみゆきたちは、図書館の中央にある建物の中に入室し、到着を待っていたホレバーヤから歓迎される。

ホレバーヤ「おやおや、みんなお揃いで到着だね?」

星空みゆき「ホレバーヤさん、こんにちは」

ホレバーヤ「はいはい、こんにちは。今回も大変だったみたいねぇ」

 みゆきの車椅子姿を見て、ホレバーヤは心配そうに呟いた。

星空みゆき「いえ、見た目ほど大きな怪我じゃないです。心配しないでください」

 これも嘘ではない。

 まだ痛みは残るものの、実際は歩けるまで回復している。

 明日から学校に再び通学するために、今は出来る限りの安静状態を続けているだけなのだ。

 と、ここでアカオーニとマジョリーナの二人が入室してきた。

 マジョリーナに至っては、みゆきたちと初対面である。

アカオーニ「あ、もうみんな集まってるオニ」

マジョリーナ「待たせただわさ」

日野あかね「ん? この小っこいお婆ちゃん、誰や?」

マジョリーナ「あたしはまだ“お婆ちゃん”って歳じゃないだわさ!!」

 何処からどう見ても老婆なのだが、本人は認めていないらしい。

 または、自分の正体と関係して認めるわけにはいかないのだろうか。

ホレバーヤ「彼女の名前は“マジョリーナ”だよ。ここを動けないあたしに代わって、宝玉探しをしてくれてるの」

マジョリーナ「あんたは図書館の館長なんだから、そりゃ仕方ないだわさ」

 腰の曲がったホレバーヤも背は低い方だが、マジョリーナは更に低い。

 二人が並ぶと、見た目を除けば祖母と孫ほどの背丈の違いだった。

星空みゆき「はじめまして、星空みゆきです」

マジョリーナ「アカオーニの奴から色々と聞いてるだわさ。まったく、物好きな人間もいたもんだわさ」

日野あかね「しゃーないやん。みゆきが助けたい言うから、ウチらも協力してんねんで?」

黄瀬やよい「みゆきちゃんの守りたいものなら、わたしたちだって守りたいの」

緑川なお「何の力もないあたしに何が出来るか分からないけど、友達のためなら精一杯頑張るよ」

マジョリーナ「ふん。まぁ、期待しておくだわさ。精々頑張るだわさ」

 この言い回しでは“期待はしない”が普通である。

 しかし、マジョリーナは宝玉を取り込んだみゆきたちの活躍を耳に入れていたためか、それなりに認めてはいるらしい。

ニコ「あら。みんな早いわね」

魔王「むぅ…今後は少し時間に気を付けてみるか…」

 そして、ここでニコと魔王の二人が到着した。

 こういった集まりで進行役をしている魔王から見れば、さすがに自分たちが最後に到着するのは肩身が狭いようだった。

星空みゆき「…あ、あれ? ウルフルンたちは…?」

魔王「あぁ、今日は集まれないらしい。休んでいた分、宝玉探しに集中しているのだろう」

星空みゆき「……そっか」

 ちょっと残念そうな顔をするみゆきの横顔を見て、あかねはニヤニヤと笑っていた。

魔王「さぁ、お喋りもここまでだ。今回はアカオーニより報告がある」

 魔王からの名指しで、みんなの視線がアカオーニに集中する。

 アカオーニの報告内容とは敵組織のこと。

 昔からの親友であり、幼馴染だったアクアーニがその一員だったことについて語られた。







 アカオーニによって、アクアーニが敵の一人だったことが語られた後、魔王が大きく溜息を吐いた。

魔王「はぁ…、また戦いにくい相手が出てきたものだ…」

日野あかね「っちゅーか、敵組織の顔と名前って知ってるもんとちゃうんか? あんたら、敵は五人やって言うてたやん」

ニコ「分かってるのは頭数だけ、とも言ったはずよ。まぁ、ルプスルンの存在だけは知ってたけどね」

黄瀬やよい「ルプスルン?」

 みゆきは、やよいとなおにアクアーニの他にも茶色い体毛に黒い髪を持つ、人狼のルプスルンという敵がいることを教えた。

 新たに青鬼のアクアーニが加わったものの、まだ顔と名前も知らない敵は三人もいるのだ。

日野あかね「ウチらは、たった五人を相手に翻弄されとるわけか……」

黄瀬やよい「でも、どうして相手は五人だ、って分かったの? 顔も名前も分からないのに……」

マジョリーナ「それはチェイサーの手柄だわさ。ルプスルンが情報をカミングアウトしたところを盗み聞きしたらしいだわさ」

緑川なお「…うわー……、あの猫らしい手口だね…それ……」

魔王「まぁとにかく、アカオーニの報告内容は把握した。今後はルプスルンだけではなくアクアーニも、そしてまだ見ぬ三人の敵に注意しつつ宝玉を回収していくとしよう」

アカオーニ「…アクアーニも、やっつけちゃうオニ……?」

魔王「どんな理由があれど、これは絵本の世界に対する裏切り行為だ。ルプスルンを含め、今回の敵陣を許すわけにはいかん」

アカオーニ「………オニぃ……」

魔王「この事件が全て片付いた時、アクアーニたちには相応の罰が与えられることは理解しておけ」

 とりあえず、ここでアカオーニが報告したアクアーニの件は終わった。

 次の議題は、やよいの宝玉についてだった。

魔王「さて、黄瀬やよいが取り込んだ宝玉についてだが……昨日から体に変化はあるか?」

黄瀬やよい「え? えーっと……」

 やよいは、みゆきの治癒と絵本の世界の治療のおかげで、今日の朝には体も元気を取り戻していた。

 しかし、これといって今までと異なるような状態は見られていない。

黄瀬やよい「すみません…。ちょっと分からないです…」

日野あかね「あぁ、それやったらマークはどうや? 刺青っちゅーか痣っちゅーか、そんなんが体のどっかに出てきたやろ?」

黄瀬やよい「え? マーク……?」

 論より証拠。

 あかねはみゆきのスカートをめくって、その下にあるハートマークの刺青を見せt

星空みゆき「ーーーって、ちょっと待ったぁッ!! あかねちゃんッ、急に何するのぉおおお!!!!」

 顔を真っ赤にして咄嗟にスカートを押さえるみゆきだったが、対するあかねはキョトンとしている。

 しかし口角は少し上向きだったため、おそらく分かってやったことだろう。

日野あかね「いやいや、見せた方が早いやん?」

緑川なお「…あかね……」

日野あかね「にしし…、さーせん♪」

星空みゆき「はっぷっぷーッ!」

ニコ「何やってんだか……」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ