絵本の世界と魔法の宝玉! Second Season

□あかねの使いやあらへんで!
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 ウルフルンは言った。

 人狼の姿でも目立たなくなるようなアイテムが欲しい、と。

 そしてマジョリーナが発明したものが、体を小さくするアイテムだったのだが……。

ウルフルン『確かに当初の目的通り、この姿じゃ目立たねぇだろうけどよぉ……それで行動不能に陥るんじゃ本末転倒だろぉが』

星空みゆき「あー……はは」

 みゆきの肩の上で、小指に乗れるほど小さくなってしまったウルフルンが愚痴っていた。

 その横には同じくらいの大きさに収まったフランドールとバットパットも人型の姿で並んでいる。

 一通りの顛末を聞いたみゆきは、とりあえず苦笑いを浮かべるしかなかった。

日野あかね「そんで? 元の姿に戻るには、あんたらが落っことした“チイサクナ〜ル”っちゅーアイテムを見つけなアカンわけか?」

ウルフルン『あぁ。そいつをもう一度使えば戻れるはずなんだ』

緑川なお「でも七色ヶ丘って言っても結構広いからねぇ」

青木れいか「宝玉探しよりは難しくないのかもしれませんが、簡単な問題というわけでもありませんね」

フランドール『例え見つけても、この格好のままじゃ重すぎて使えねぇ』

バットパット『どの道、みなさんのお力を借りる他にないのです。宝玉探しのついででも構いません。どうか探し出してくださいませ』

 とりあえず館内に帰らせることも出来るが、宝玉探しを任されて派遣されている以上は無関係な理由で帰ることは躊躇われる。

 それに今頃、マジョリーナも宝玉探索で忙しいはずだ。

 魔王に至っては、世界中に散らばった宝玉の探索方法を改めるとして、ウルフルンたちの個人的な問題にまで干渉していられないだろう。

黄瀬やよい「ずっとこのままってわけにもいかないし、探してあげようよ」

日野あかね「せやな。ただでさえウチらは宝玉の気配も分からんねん。目に見える探しモンやったら、ウチらの出番やな!」

ウルフルン『悪りぃな。助かるぜ』

 しかし、みゆきたちとて何も用事がないわけではない。

 もちろん宝玉探しは重要な任務で、ウルフルンたちの問題も無視できない。

 だが一度決めていた目的を未達成のままで放っておくことも後味が悪いのだ。

星空みゆき「……ねぇ、ウルフルン。ちょっとだけ、わたしたちの用事にも付き合ってくれる?」

ウルフルン『あん? オマエらの方も何かあったのか?』

星空みゆき「うん…。実はね………」

 みゆきは、今日一日の学校生活を振り返って話し始めた。

 クラスメートの豊島と天願を仲直りさせるため、何とか二人の距離を縮めてみようと頑張ってきたこと。

 しかしそれらは全て空回りして、結局二人の仲は悪いままであること。

バットパット『なるほど……。男性同士の仲違いを解消するのは、並大抵のことではありませんからねぇ』

フランドール『決めつけてんじゃねぇよ。そんなモン人それぞれだろうが』

星空みゆき「それでね。ずっとこのままなのは嫌だから、何とかしてあげたいなぁ、って思ってたんだけど……」

 正直、手は尽くしたつもりでいる。

 クラスメートという接点以外に関わりを持たない二人のことだ。

 学校が終われば下校して、明日の朝に教室で顔を合わせ以外にコミュニケーションを取る場所はない。

 今日という日が終わってしまえば、また明日の朝から再スタートになってしまう。

 と、そんな時だった。

 みゆきの耳に届く程度の音量で、グググ〜ッ、と腹の虫が鳴く音が聞こえる。

星空みゆき「え?」

ウルフルン『……そう言や…朝から何も食ってねぇや…』

バットパット『はは……わたくしもです…』

フランドール『右に同じく…』

 ウルフルンたちの空腹音だった。

星空みゆき「お腹空いたの?」

ウルフルン『このサイズじゃ大して食えねぇしなぁ……何かねぇのか?』

星空みゆき「う〜、今は持ち合わせが……」

日野あかね「………食べ物、か…」

 すると、ウルフルンたちの空腹をヒントにあかねが閃いた。

日野あかね「よっしゃ! ええこと思い付いたでぇ!」

星空みゆき「え?」

緑川なお「二人を仲直りさせる名案の話?」

日野あかね「せや! やっぱ険悪な雰囲気を吹っ飛ばすんなら、美味いもん食って仲直り! これに尽きるで!」

バットパット『なるほど……確かに二人で食事させるのは良い手ですね』

青木れいか「わたしも同意見です。仲直りに食事の法を用いるのは定番ですね」

黄瀬やよい「でも、何を食べさせるの? みゆきちゃんもそうだったけど、わたしたちって持ち合わせないよ?」

 その問題はすぐに解決した。

 仲直りの舞台として学校がダメだったならば、放課後の校外へと視点を変えればいい。

 加えて、あかねの家はお好み焼き屋さんなのだ。

日野あかね「ウチが最高のお好み焼きを振舞ったる! 放課後みんなで、ウチのお店に集合や!」

ウルフルン『お好み焼きかぁ……。悪くねぇなぁ♪』

緑川なお「でも、どうせならみんなで楽しく食べてみたいよね? ちょっと珍しいメニューとかってないの?」

 あかねのお好み焼きは、定番の大阪風が評判のスタイルである。

 独自の手法を取り入れてはいるものの、特別珍しい材料を扱っているわけではない。

 美味しいお好み焼きなのは確かだが、珍しさを言うならばインパクトは欠けるだろう。

フランドール『それなら何か付け足してみたらどうなんだよ? 少しは別の旨味も出てくるんじゃねぇか?』

黄瀬やよい「付け足す……? 隠し味みたいな感じかなぁ」

青木れいか「というと、スイカに塩をかける要領でしょうか?」

日野あかね「スイカに塩?」

青木れいか「甘いものには辛いもの、辛いものには甘いものを程よく加えると味が引き立つんですよ」

緑川なお「あたしも、カレーを作る時はリンゴを入れてるよ」

 アイディアだけなら尽きなかった。

 みんなで楽しく、美味しいお好み焼きを作る。

 そうと決まれば行動は二つ。

 まずは豊島たちを逃さないように放課後はみんなでお好み焼き屋あかねに集合すること。

 そして、各自でお好み焼きに合いそうな隠し味的材料を持ち寄ってみること。

日野あかね「にしし♪ 当面の目的は決定やな? ほな、あの二人を捕まえに行くで!」







 一方、七色ヶ丘市内の某ファミレス店内にて。

女性店員「お客様。申し訳ありませんが、お面は取っていただけますか?」

ルプスルン「あぁ? お面だぁ?」

女性店員「他のお客様が怖がりますので」

 ルプスルンが入店する時点で、ファミレスの店員と揉め事を起こしていた。
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