絵本の世界と魔法の宝玉! Last Season

□敵陣潜入!
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 決戦の舞台は、人間界から青髭の世界へ。

 みゆきたちの目の前には、青髭が率いるデッドエンド・バロンの根城とされる大きな洋館が建っていた。

星空みゆき「ここが、デッドエンド・バロンの……」

日野あかね「ついにここまで来たんやな……」

黄瀬やよい「わたしたちが一ヶ月間で鍛え抜いた力、ここで発揮しなくちゃね」

緑川なお「ここで敵を殲滅できれば、あとは全部の宝玉を回収するだけ」

青木れいか「ですが、お兄様たちも捕まっている身です。気を引き締めていきましょう」

ニコ「それだけじゃないわ。絵本の世界の住人も、あの洋館に捕らわれてるはず……」

魔王「行方知れずになってから随分と時間が経った……。無事でいてくれれば良いが……」

ウルフルン「つーか、みゆきんとこの男子共はどうした?」

チェイサー「ニーヤニヤニヤ♪ 風のお嬢さん曰く、後から合流するかもしれないみたいだよーん?」

フランドール「この世界に踏み入った以上、みんなで生きて帰るわよ」

ジョーカー「もう仲間を失うのは懲り懲りですからねぇ」

 宝玉事件が起きてから多くの人間が協力者になり、その者たちも含めて絵本の世界の住人と共に多くの者たちが散っていった。

 だが、ここでの戦いが終われば一気に安息が訪れる。

 デッドエンド・バロンとの決着こそが、事件終息の近道なのだ。

星空みゆき「みんな……ッ、行こうッ!」

 みゆきの言葉に全員が頷き、一斉に洋館へと足を踏み入れる。

 その洋館は、まるでみゆきたちを歓迎するかのように自然と扉を開き、全員が入館した直後に自然と閉ざされていった。

 ついに……みゆきたちを巻き込んだ宝玉事件の、最後の戦いが始まる。







 洋館の中は薄暗かったが、視界はギリギリ確保できる程度に灯りがあった。

 周囲を警戒しながら奥に進んでいくと、広いエントランスホールへと到達する。

日野あかね「うお、何や…えらい広いな……」

黄瀬やよい「体育館みたい…」

 目の前が拓けたことで警戒するべき場所も自然と増えていく。

 右か、左か、前か、真上か。

 それぞれが身構えつつ更に奥へと踏み出そうとした時、真正面からゆっくりと姿を現す影があった。

ルプスルン「………待ってたぜ…」

星空みゆき「……ッ!」

 出現は正面。

 ウルフルンと同じ人狼の青年、ルプスルンが静かにエントランスホールへと姿を現した。

魔王「ルプスルン…ッ」

日野あかね「よりにもよって、一番最初が三幹部って…ッ」

ルプスルン「プークスクスクスッ。そォ焦んなってェの。この場でブチ殺してやってもいいが、それじゃ折角のショータイムがつまんねェじゃねェか」

ウルフルン「ショータイムだぁ?」

ルプスルン「あァ、そうさ…………オルァッ!!!!」

 突如、ルプスルンがエントランスホールの床に蹴りを入れる。

 すると、あらかじめ切れ目でも入れられていたのか、エントランスホールの床は見る見る内に綺麗な亀裂を描き崩壊を招き始める。

星空みゆき「ーーーッ!?」

青木れいか「これ、は!」

チェイサー「あーららッ。ちょっとヤバいかもねぇ!」

 この洋館には地下もある。

 加えて、このエントランスホールから続く廊下への入口も四方八方に用意されていた。

 その中からルプスルンは、真正面の出入口から出てきたに過ぎない。

ルプスルン「最期の長期休みは楽しんできたかァ? どうせここで全員くたばるんだ! 一ヶ月も無駄にはしてねェんだろ!?」

ニコ「ルプスルン! まさか、わたしたちを分断する気!?」

ルプスルン「プークスクスクス!! 狩りってのは逃げ回る狐を捕まえることに面白みがあるんだぜェ? 食われるだけの豚で終わってりゃ面白くもねェからよォ! 精々泣き喚いて逃げ回りやがれェ!!」

 このままでは全員で地下に落とされてしまう。

 それでは行動範囲が一気に狭まってしまうが、全員が助かるにはエントランスホールから続く廊下に飛び移っていくしかない。

 だが、各々の立ち位置が離れすぎている。

 全員が同じ廊下に避難することは不可能で、それを回避するためには各々の現在地から最も近い廊下に飛び移る他になかった。

 つまり、敵の思うツボ。

 ここで各々に分断しなければ、この場を乗り切ることができなくなったのだ。

ジョーカー「仕方ありませんッ。元より、ワタシたちは全員生き残ることが前提なのです!」

青木れいか「みなさんッ、必ずまたお会いしましょう! お気をつけてッ!」

 れいかとジョーカーが揃って手を取り、身近な廊下へと飛び移っていく。

 それを手始めに、他の者たちも次々と自分に最も有利な道順を踏んで移動していく。

星空みゆき「えーっと……ッ、わ、わたしは……!!」

 唯一、どの廊下に進めば最も効率がいいのか判断できなかったみゆきだけは最後まで悩み、少しずつ地下へと落下を始める。

 だが、そんなみゆきに手を差し伸べる二人がいた。

日野あかね「みゆきぃッ!!」

星空みゆき「……! あかねちゃんッ」

 ウルフルンに抱えられたあかねが、そのままみゆきの方に手を伸ばしている。

 その手を取ったみゆきも強引に引き寄せたウルフルンは、落下していく床の瓦礫を踏み台に前へ前へと飛び進んでいった。

星空みゆき「ウルフルンッ。何処の廊下に行くの!?」

ウルフルン「考えたって分かんねぇよ! だったら、あっち側から攻め入った方向が一番可能性も高けぇだろうさ!」

 みゆきとあかねを抱えたウルフルンが目指す場所。

 それは、ルプスルンが姿を現した真正面の通路から伸びる廊下だった。

 しかし……。

ルプスルン「プークスクスクス。最初の獲物はテメェらだな?」

日野あかね「ーーーッ! 来るでッ、ウルフルン!」

ウルフルン「分かってらぁ!!」

 瓦礫と瓦礫を踏み台に、二匹の人狼が空中で交差する。

 拳と蹴りが交わり、各々が崩れゆくエントランスホールに留まった。

 やはり、そう簡単には通してくれないらしい。

ウルフルン「…くそったれが……ッ」

ルプスルン「プークスクスクス! 肩の力ぁ抜いて楽しく殺ろうぜぇ……なぁ?」







 エントランスホールの様子を、ジルドーレは遠隔操作モニターを駆使して私室で見物していた。

 その傍らにはニカスターの姿もある。

ジルドーレ「ほぉ…、まだ誰も地下まで落ちておらんのか…」

ニカスター「時間の問題ですね。ルプスルンを含めた四名が踏み留まっているみたいですが……」

 みゆきたち四人以外は全員、それぞれ別々の廊下へと進んでいった。

 デッドエンド・バロンの戦力全滅と人質の救出を目的に。

 すると、ここでニカスターは洋館の外の様子に気付く。

ニカスター「おや?」

ジルドーレ「どうした、ニカスター」

 洋館の外……正確には空。

 一瞬、大きな闇の力を感じ取ったのだが、すぐに四方八方に分散してしまった。

 直後、この洋館の各所に四人ほどの戦力が不時着していく気配も感じながら。

ニカスター「ニィッフフフ。どうやら、お母様たちの勢力は全員が洋館に集結したようです」

ジルドーレ「おぉ、遅れて到着予定だった者たちも到着したか……、よしッ」

 するとジルドーレは、地下に備えていた仕掛けの一つを作動させる。

 本来ならば作動させる必要性のないものだったは、これも楽しみの一つとでも思っているのだろう。

ジルドーレ「これはゲームだ。私が楽しむためのな」

ニカスター「存じております」

 その判断と考えに、ニカスターは一切反論しなかった。
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