絵本の世界と魔法の宝玉! Last Season

□不思議の国の終焉
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 赤、青、黄、緑。

 それぞれ三色の鼻を持つアカンベェは、攻守と魔法を各々で分けた性能を持っている。

 だが……。

赤剣アカンベェ「アッカンベェ!!」

チェイサー「あらよっと♪」

 赤い鼻のアカンベェが繰り出す剣撃を、チェイサーは見事なバック転で避け続ける。

チェイサー「ほいさっさ♪」

青盾アカンベェ「アカンベェッ!」

 大きな盾の姿で召喚された青い鼻のアカンベェを踏み台にして、チェイサーの体が本来よりも高く高く跳躍した。

チェイサー「それそれ〜!」

黄兵アカンベェ「アカッ!!?」

 跳躍した勢いのまま、黄色い鼻のアカンベェの大口を掴み上げ思いっきり引っ張り上げる。

 大きく体を傾けた巨兵姿のアカンベェが倒れ込む先には、杖を構える緑っ鼻のアカンベェ。

緑杖アカンベェ「ーーーッ」

チェイサー「ニーヤニヤニヤ♪」

 倒れようとする巨体から避けるには、仲間であるアカンベェを攻撃して巨体の倒れる軌道を逸らすしかない。

 本来のアカンベェなら、迷うことなくその方法を使ったのだが……。

緑杖アカンベェ「アカンベェ!!」

チェイサー「およよ?」

 杖を抱えた緑の鼻のアカンベェは、巨体が倒れ込む範囲の外に向かって走り出した。

 自分の意思で戦況を見極めることに長けた魔法使いのアカンベェには、それ相応の知能が備わっている。

 戦闘一本に長けた頭脳派の黄色い鼻のアカンベェとは、また一味違った戦法を取れるようだ。

チェイサー「ニーヤニヤニヤ! やるねぇ〜♪」







 黄色い鼻を持つ巨兵アカンベェが倒れ込むと同時に、その勢いが生んだ地響きの中で二人の巨漢が衝突する。

ウラシマン『オォォォオオオオオッ!!!!』

美優楽眠太郎「だぁぁぁあああああッ!!」

 ただし、一人は宝玉の力によって変化した巨人の中。

 自身の体から生み出した土の巨人の頭部の中で、眠太郎は眼前のウラシマンと戦い合う。

 ジルドーレによって自我を失い、戦闘本能のみで動き回ることしかできなくなった哀れな暴走主人公を相手に。

美優楽眠太郎「そんな乱暴な力でッ、助けられる亀なんざ一匹もいねぇぞ! 正気に戻れぇッ!」

ウラシマン『おぉぁぁあああああッ!!!!』

 眠太郎の声は届かず、ウラシマンの振るった右腕が土の巨人の右腕を粉砕する。

 その直後、土の巨人の右肩口からボコボコと新たな土が形成され、再び右腕を形作っていった。

 だが……。

美優楽眠太郎「うぐ…ッ、だぁ…! 痛ってぇ……ッ」

 右腕を破壊されたダメージが眠太郎に通じているわけではない。

 宝玉の力を使って右腕を形成することに、眠太郎の持つマジカルエナジーが大きく消費されているのだ。

 一度この巨人を作ってしまえば、それほどダメージが加わることはない。

 しかし、壊された部分の修復には頭痛に似た鈍痛が走り、長時間の維持には全身が痺れるような痛みが次第に強まるのである。

美優楽眠太郎「戦いを長引かせるわけには、いかねぇな……。正気に戻らないなら、無理矢理にでも眠っててもらうぞ!」







 一匹の化け猫と四体の怪物。

 土の巨人と暴走する主人公。

 その激戦の傍らでも、風の少女と最強の魔法使いが交差していた。

緑川なお「はぁあああッ!!!!」

マホローグ「ふんッ!!」

 なおが脚を振り上げ、風をまとった蹴撃を連続して振り放つ。

 それに対して、マホローグは大きな杖を振るって防ぎ、また薙ぎ払うようにして迎撃を試みる。

 その攻撃させ、なおはチェイサーのようにヒョイヒョイと避けて回りながら、更に追い打ちを掛けるようにして風の刃を蹴り放っていく。

緑川なお「“天風の一撃(マーチシュート)”!!」

マホローグ「くッ!!」

 杖に乗って高く浮上し、なおの攻撃を素早く避けてみせたマホローグは、そこで気を休めることなく次なる攻撃へと移行した。

マホローグ「これなら避けれないだろッ」

緑川なお「……!」

マホローグ「潰れてしまえぇ!!」

 マホローグの乗っている杖の先端が強く光り輝く。

 その部分に備え付けられた水晶玉が光を発しているのだ。

マホローグ「撃ち放てぇえええッ!!!!」

 直後、当たったものを焼き切る高熱のレーザーがバラ撒かれた。

 風という実体のない敵を相手に、こちらも実体のない攻撃で対抗する試みらしい。

緑川なお「……眠太郎さんッ」

マホローグ「……!?」

 なおの呼びかけに、眠太郎もチラリと横目で戦況を確認する。

美優楽眠太郎「はいよッ!」

 即座に対応した眠太郎は、一瞬だけウラシマンから気を逸らし、なおとマホローグの間に向けて土の巨人の腕を振るわせる。

美優楽眠太郎「“流星の激震(ティエラコメット)”!」

 振るわれた巨人の腕の中から、振い落されるようにして何十個もの土塊が飛び出してきた。

 それらは、なおとマホローグの間に溜まって塊始め、二人の視界を見る見る内に奪っていく。

マホローグ「……ッ、小癪な!」

 そんなものは盾にもならない。

 レーザー光線を我武者羅に当てて土塊の壁を破壊していくが、その先にいるなおが見えていないのだから、肝心な目標には当たらず終い。

 対して、なおは……。

緑川なお「“天風の一撃(マーチシュート)”!」

マホローグ「ーーーッ」

 レーザー光線によって崩された土塊から、どの辺りにマホローグがいるのかを予想する。

 そんなものは大体で構わない。

 あえて土塊の壁を壊す勢いで風を生み出せば、その方向に土の塊が飛来していく。

 風と違って土には実体がある。

 マホローグに直撃すれば、それ相応のダメージに繋がるはずだ。

美優楽眠太郎「これでいいか!?」

緑川なお「バッチリ!」

マホローグ「こ、のぉ!!」

ウラシマン『ガァァァアアアアア!!!!』

 だが、一瞬でもウラシマンから目を離していた眠太郎にも危機が迫る。

 その穴を埋めるのは、今も遊び呆けて戦場を渡っているチェイサーの役目だった。

チェイサー「ニーヤニヤニヤ! 巨人族のおっちゃんがピンチだねぇ♪」

美優楽眠太郎「誰が巨人族だ。ともかく、一瞬だけだが任せるぞ」

 なおからウラシマンへの対峙に体勢を立て直すまで、ほんの一瞬でも時間はかかる。

 その隙にチェイサーは、あえてウラシマンの視界へと姿を現した。

チェイサー「ウラシマーン! やっほー♪」

ウラシマン『ーーーッ!!?』

 突然、目の前に予想外の乱入者が現れたら驚くのが普通だろう。

 慌てたウラシマンが腕を振るい、目の前のチェイサーを振り払おうと暴れ始めた。
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