絵本の世界と魔法の宝玉! First Season

□迫り来る恐怖!
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 偶然にも、道を開く合図となる三つの手順を正確に踏んだ。

 途端に本棚が輝きを強め、みゆきたちの目の前で大きく広がっていく。

星空みゆき「えッ? えッ?? なになに、何なの!? 本が、光って……」

ネコさん?「チッ。まさか、こんなことがッ」

 あまりにも予想外の事態に、少年も対応が遅れた。

 道を開いたみゆきを迎えるように、本棚の光がみゆきの体を吸い込んでいく。

星空みゆき「えッ、ちょ、うわぁぁぁあああああッ!!!!」

ネコさん?「……ッ!」

 ここで逃すわけにはいかない。

 少年もみゆきに続いて飛び込もうとした矢先、また奇妙なことが起きる。

 まるでみゆき以外は求めていない、とでも表したのだろうか。

 みゆきが吸い込まれていった本棚の向こうから伸びてきた黒い影が、少年の体を図書室側に押し戻した。

ネコさん?「ーーーなにッ!!?」

 連続して続く異常事態に呆然とし、そのまま尻餅を突いて倒れる少年。

 起き上がった時には既に道は閉ざされ、みゆきは図書室からの脱出に成功していた。







 不可思議な道を通り抜け、みゆきは地面に投げ出された。

星空みゆき「ぅぐッ!! 痛〜い……」

 だが痛がったのも束の間。

 顔を上げたみゆきは、目の前に広がる幻想的な光景に思わず呆然としてしまった。

星空みゆき「……すごい…、何処だろう……ここ…。きれい……」

 例えるなら、大木の中の秘密基地だろう。

 草花の地面に、大木の壁。

 空に向かって光の粒子がフワフワと飛び交う光景は、さながら絵本の中に出てくる妖精の住処のようだった。

星空みゆき「……! これって、もしかして…ッ」

 何かに気付いたみゆきが、大木の壁へと向かっていく。

 そして、その予感は的中した。

星空みゆき「やっぱり…! 周りの壁、全部に本が並んでるんだ! すごーいッ!」

 だが、感動していられる時間は短かった。

 誰かの気配を感じ取り、その足音が近付いてくるのが聞こえる。

星空みゆき「ーーーッ」

 この状況は知っている。

 誰もいない空間で、いなかったはずの誰かと遭遇する恐怖は、つい先ほど味わったばかりだ。

星空みゆき「(も、もしかしてッ、あのネコさんが追いかけて来たッ!? ど、どうしようッ!!)」

 何処かに隠れなくちゃ、と思ったが周りに体を隠せる障害物はない。

 しかし、そうして辺りを見渡したことは無駄にならなかった。

 この場所に来た時と同じように、また光り輝いている本棚を見つけ出したのだ。

星空みゆき「…あ、また光ってる」

 今度は手を差し入れるのではなく、目視しようと覗き込んでみることにした。

星空みゆき「ん〜……?」

 本棚の向こうから見えたのは、どうやら何処かの町並みのようで、つまりは外だった。

 まだ七色ヶ丘市の町に詳しくないが、状況から把握するに商店街のような場所だろう。

 そんな在り来りな日常風景の中で、浮き彫りになっている人物を見つけた。

星空みゆき「……あッ! オオカミさんッ!!」

 商店街の上空に、絵本の世界に出てくるような狼の姿を見つけ出した。

星空みゆき「ど、どうなってるの!? 本の向こうにオオカミさんッ!?」

 咄嗟に顔を突っ込んで、もっとよく見てみようと試みたが、そんなことをしても無駄な足掻きである。

星空みゆき「むぐぐ〜ッ!! ちょっと、これどうなってるのッ! オオカミさんが見れないよぉ!!」

 早々に顔を突っ込む方法を断念したみゆきは、本棚の向こう側に行こうと本を掻き分けていく。



 カチッ、カチッ、カチンッ。



 その最中、また偶然にも手順を踏んでいることなど気付かずに。

星空みゆき「ーーーッ!!?」

 突如、本棚が一斉に光り始めると、また先程と同じ光景が目の前に広がる。

星空みゆき「……ま、また…? うわ…ッ!!」

 勝手に進んでいく出来事を見送ることしかできなくなり、ようやく冷静を取り戻したみゆきは……一つの違和感に気付いた。

 確かにみゆきは今、本棚の向こうに狼の姿を見つけた。

 しかし、ホームルーム中に見つけた狼の姿は、本棚の向こう側に見た狼のように……。



 茶色い体毛に、真っ黒な髪を生やしていただろうか……?



 よく思い出せないまま、再び道を開いたみゆきの大移動が始まる。







 同時刻、七色ヶ丘中学の周辺で探し物をしていたウルフルンたちにも転機が訪れる。

ウルフルン「ーーーッ」

フランドール「……この気配」

バットパット「…今朝の宝玉ですね。今になって気配が現れるとは……。ですが…」

 今朝方に感じた宝玉の気配を追って、この七色ヶ丘中学に辿り着いた。

 何故かピタッと気配が消えてしまったため困っていたところだったが、こうして再び気配が戻ってきたことは喜ばしい。

 だが、しかし……。

ウルフルン「どうなってやがる……。この学校から随分と離れてるじゃねぇかッ」

フランドール「気配の位置を察すると、商店街の近くかしら…?」

バットパット「…気配を消すことが出来る機能に加えて、これは完全な瞬間移動。でしょうかねぇ〜?」

ウルフルン「冗談抜かしてんじゃねぇ。とにかく気配は本物だッ。どんな状況であんな場所に出てきたのか知らねぇが、今度こそ見つけ出して回収するだけだ!」

 ウルフルンたちは、七色ヶ丘中学の周辺から離れることになった。

 目指すは、何故か突如として気配が現れた七色ヶ丘商店街の一角である。



 そう……この時のウルフルンたちは、まだ七色ヶ丘中学の周辺にいた。

 七色ヶ丘商店街には、まだ現れていないのである。
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