絵本の世界と魔法の宝玉! First Season
□宝玉の覚醒!
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地面に投げ出されたフランドールとバットパットも、先程まで間近に感じていた宝玉の気配が消えていることに気付いた。
フランドール「……?」
バットパット「…おや? おかしいですね…」
星空みゆき「…………」
一人、血の気が引いて青ざめた表情を浮かべるみゆきが、足を崩して座り込んでる。
その様子から、もうみゆきが宝玉を所持していないことを二匹は察した。
フランドール「転んだ時、何処かに手放しちゃったみたいね」
バットパット「振り出しに戻りましたか……。まぁ、この現象は本日二度目です。気にせず探索を再開しましょう」
フランドール「のん気なこと言ってる場合でもないわ。また別の誰かの手に渡れば、結局わたしたちが困るだけなのよ」
バットパット「その前に見つけてしまえば問題ありませんよ。さぁ、時間は有限です。参りましょう」
勝手に話が進んでいる最中も、みゆきの表情は晴れなかった。
最初は口や首を押さえ、今は胸やお腹を摩っている。
自分が何をしてしまったのかを、体の外側からでも認識するために。
フランドール「……? どうしたの? 転んで気分でも悪くなった?」
星空みゆき「…い、いや……あの…」
バットパット「あぁ、宝玉をなくしてしまったことに責任を感じているのですか? それなら問題ありません。あなたが宝玉を手放したことは、どちらかと言えば良きことなのです」
星空みゆき「え、えーっと………ち、違うの…」
フランドール「…? 違う…って、何が?」
みゆきの意図を聞こうと黙った二匹を前に、みゆきは震える唇を開いて説明した。
星空みゆき「わたし……宝玉、飲んじゃった、かも……」
フランドール「……」
バットパット「……」
呆然。
その言葉を表すように、二匹は音もなく硬直した。
星空みゆき「ご、ごめんなさいッ!! まさか上から降ってくるなんて思わなくてッ。で、でもでもッ、わたし、どうしたらッ!?」
フランドール「……そんなに慌てなくても大丈夫よ。飲み込んだなんて、気のせいだわ」
星空みゆき「………へ…?」
慌てふためくみゆきに対して、硬直時間から解放された二匹は落ち着いていた。
バットパット「フランドールの言っていることに間違いはありません。あなたは宝玉を飲み込んでなどいませんよ。良かったですね?」
星空みゆき「…ど、どうして…そう言い切れるの?」
何故か自信満々な二匹を前に疑問符が尽きない。
だが、その理由を二匹が話してくれることはなかった。
フランドール「ごめんね。それを教えるわけにはいかないの。これは、わたしたちの問題だから」
バットパット「ともかく、あなたは既に解放されました。もう宝玉を持っていないようですし、この先で誰かに狙われることはありません。わたくしたちのことは忘れて、再び平凡な日常にお戻りください」
星空みゆき「ま、待ってよ! こんなのスッキリしないッ。わたしにも何が起きてたのかくらい、話してくれたって」
興奮、とまでは言わないが、強い意志を示すようにしてみゆきは立ち上がり、地面に立つ二匹の傍に駆け寄ろうとする。
その時だった。
ピシャァァンッ、とみゆきの体から強い光が放たれ、その体の輪郭が薄桃色に輝いたのだ。
星空みゆき「…え?」
フランドール「ーーーッ!!?」
バットパット「ーーーなッ!?」
ここに来て、ようやく二匹の表情が驚愕の色に一変する。
星空みゆき「な、何……これ…?」
みゆきの輪郭が、まるでネオンのように輝き、その声も反響しているような違和感を孕んで聞こえてくる。
その様子から、二匹は信じ硬い事実を認める他になかった。
フランドール「…もしかして……本当に…」
バットパット「宝玉を取り込んだと言うのですか!? そんな馬鹿なッ。人間だろうと何であろうと、宝玉を取り込めばどんな目に遭うかッ」
星空みゆき「や、やっぱりあの宝玉が原因なの!? ねぇッ、わたしどうなっちゃったのッ!?」
狼さん「知る必要はねぇよ。テメェは死ねば全てを忘れる」
星空みゆき「ーーーッ」
二匹から詳しい説明を聞くまでもなく、みゆきは背後を振り返り、上空を見上げる。
星空みゆき「さっきの、茶色いオオカミさん……」
狼さん「小娘…、テメェ宝玉を取り込んでも何ともねぇのか? オレらよか、よっぽど化け物じゃねぇか」
星空みゆき「…ぇ?」
狼さん「プークスクスッ、まぁいい。結局のところ、オレのやるべきことに変わりはねぇんだ。大人しく宝玉を差し出してりゃ、こんな手段を強制することもなかったのになぁッ」
バットパット「……ッ! フロイラインッ、お逃げなさいッ!!」
星空みゆき「え?」
バットパット「彼は、本気であなたを殺すつもりですッ! ここにいては、あなたは殺されてしまうのですよ!!」
狼さん「もう遅ぇよ!! プークスクスクスッ!!!!」
両手に伸びる鋭い爪を構え、上空から急降下してくる狼。
その姿を見たみゆきは……。
まるで受け流すような仕草で、狼の攻撃を易々と避けてしまった。
狼さん「ーーーあぁッ!!?」
星空みゆき「……ッ」
かなりの速度が出ていたはずだが、みゆきの目には遅く映った。
まるで、スロー再生している映像を見せられたかのように。
星空みゆき「なに、今の…」
狼さん「チッ……何を避けてんだ、テメェッ」
そのまま狼は、原始的に殴り倒す戦法に切り替える。
両手の拳を握り締めて我武者羅に連撃を繰り出すが、その全てをみゆきは首を振ったり体を捻ったりすることで全て避けきってしまう。
昔懐かしい戦闘アニメのワンシーンのように、狼の攻撃は一発もみゆきには当たらない。
狼さん「鬱陶しいわッ!! さっさと倒れやがれぇ!!」
星空みゆき「そ、そんなこと言われてもッ、って、きゃあッ!!」
ほんの少しだけ頬を掠めた。
幸いにも爪は当たらなかったようで切り傷はできなかったが、その拍子にみゆきは右腕を振り上げて顔を守ろうとする。
次の瞬間。
例えるならば、光で作られた鞭。
右腕から伸びたそれが思いっきり振られたことによって、狼の両目が強い光に打ち付けられた。
狼さん「ぐわぁあああッ!! 目がッ、目がぁぁぁッ!!」
星空みゆき「え!? あッ、ご、ごめんなさい!!」
今もプラ〜ンと右腕から垂れ下がっている光の鞭に動揺しつつ、視界を遮られて苦しむ狼を心配する。
ブンブンと右腕を振って光の鞭を引き離すと、その鞭は空中に溶けて消えていった。
星空みゆき「なに? わたし、どうなっちゃったの……?」
すると、背後から別の声が聞こえて解説してくれた。
ウルフルン「それは“光の宝玉”の力だ。宝玉を完全に取り込んだことで、光の能力が覚醒したんだろ」
振り返れば、先ほどのフランドールたちと同じように信じられないものを見るような目をしたウルフルンが立っていた。
星空みゆき「…ひ、光の…宝玉……?」
ウルフルン「まったく、信じられねぇ……。オマエ、マジで何者だ?」
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