絵本の世界と魔法の宝玉! Second Season

□険悪解消!
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 すると何かの臭いを嗅ぎつけたのか、ルプスルンはマホローグが探し物をしている付近のガラクタの中にある、大きな壺へと近付いた。

ルプスルン「ん〜……? おい、何だこりゃ?」

マホローグ「あぁ? 魔法強化に使う薬の一緒だよ」

ルプスルン「美味ぇのか?」

マホローグ「トカゲの尻尾、豚のヨダレ、蛙のオナラ。それが材料だが食ってみるか? モルモット野郎」

ルプスルン「誰が実験動物だ、ゴルァ」

 アクアーニ、黙って耳を塞ぐ。

 食べたばかりのものを戻してしまいそうになったようだ。

ルプスルン「……いつもならテメェの頭蓋を砕いて壺ん中にブチ込んでやるところだが……生憎とマジで力不足だ…。運が良かったな…」

 空腹音を立てながら力なく地面に腰を下ろすルプスルン。

 そんな様子などに見向きもしないマホローグは、まだ山のようなガラクタの中で探し物を続けていた。

アクアーニ「ところで、先程から何を探しているのであるか?」

マホローグ「完成させたばかりの魔法アイテムが見当たらないんだよッ。まったく腹立たしい! まさか……お前たちの仕業じゃないだろうなぁ!?」

アクアーニ「知らぬ」

ルプスルン「ったく、朝っぱらから騒がしいと思ったら……。で? 何が無くなったってんだよぉ」

 空腹を紛らわすためなのか、それとも本当に気になったのか、ルプスルンは話題を続けるためにマホローグの紛失物を聞き出した。

マホローグ「指輪だ」

ルプスルン「指輪ぁ?」

マホローグ「僕の魔法力を底上げするパワーアップアイテムなんだ! 役立たずなお前たちも知らないってんなら、町の方まで吹っ飛んじまったのか……クソッ」

ルプスルン「一言余計なんだよ、テメェは。食い殺すぞ」

 グゥグゥと腹の虫が鳴り止まないルプスルンに痺れを切らしたのか、アクアーニは山の中に捨ててあったゴミの中から料理雑誌を持って投げ渡す。

アクアーニ「これでも見てはどうだ?」

ルプスルン「あん? 何だこりゃ……お好み焼き……?」

 雑誌の見出しに掲載されていたのは、美味しそうに撮影されたお好み焼きの写真だった。

ルプスルン「…おー……」

 しばらく興味津々に眺めていたルプスルンだが、空腹の調子は落ち着くどころか増す一方で治まらなかった。

ルプスルン「…ってッ、当ったり前ぇだ!! ボケェ!! こんなモン見せられりゃ余計ぇ腹が減るに決まってんだろうがッ!!」

アクアーニ「単純な脳細胞なら欺けると思ったが……意外にもシワは刻まれていたのだな」

ルプスルン「どいつもこいつもッ、クソッタレがぁッ!!」

 アクアーニとマホローグの態度にブチ切れ寸前だったが、肝心な力が出ないのでは迫力もない。

 そうこうしている間に、マホローグは大きな杖にまたがると二人の反応も待たずに浮遊を始める。

アクアーニ「む? 何処に行く気だ」

マホローグ「決まってんだろ。なくした指輪を探しに行くのさ」

アクアーニ「私たちが共に行動するよう言いつけられていることを忘れたか? 単独行動は命令違反だぞ」

マホローグ「だったら勝手について来い」

 言うが早いが、マホローグは大きな杖を操作して七色ヶ丘の町に向かって飛んでいってしまった。

 残されたルプスルンとアクアーニも、やれやれと言った調子で行動を始めていく。







 一方その頃。

 七色ヶ丘中学では、みゆきによる豊島と天願の仲直り大作戦が決行されようとしていた。

豊島ひでかず「はぁ?」

天願朝陽「親睦を深めて、仲直り?」

星空みゆき「そうそう♪ せっかく席も近いんだし、もっと親しくなれてもいいんじゃないかなぁ〜って!」

 豊島と天願がお互いの顔を見合わせる。

 しかし、それは三秒と経たずに逸れてしまった。

豊島ひでかず「別にいいし」

天願朝陽「ん〜、友達は選べるからねぇ〜」

 素直に切り捨てる豊島と、遠回しに遠慮する天願。

 やはり相性も悪いのか、二人は仲を深めるつもりがないようだった。

星空みゆき「…………」

日野あかね「元気出しぃや。まだ手は残ってるでぇ?」

星空みゆき「え?」

 二人が席に戻っていった後、落ち込んだ様子のみゆきにあかねが話しかけてきた。

 今日の時間割を見てみると、この後は化学と体育の授業が待っている。

日野あかね「まずは化学やけど、席の近いモンで班が作られるはずや。否が応でも協力せなアカン状況なら、少しは心の距離も近付けるはずやで」

星空みゆき「……! そっかぁッ、それをわたしたちが良い具合に後押ししていけば……ッ」

 まだ望みはある。

 そう思っての化学の授業だったが……。

日野あかね「豊島ッ、アカンって!!」

天願朝陽「入れ過ぎ!! 入れ過ぎ入れ過ぎッ!!」

豊島ひでかず「え?」

 ビーカーに注ぐべき薬品の量を大幅に間違え、化学実験室が大混乱。

 続いての体育も、男女別バスケで何らかの友情がぁ……と思われたが。

星空みゆき「二人共、同じチームみたいだね!」

黄瀬やよい「でも……何か内輪揉めしてない……?」

 パスのミスで、天願のボールが豊島の顔面にクリーンヒット(悪気なし)。

 その後、仕返しとばかりに豊島による天願への妨害行為(悪気あり)。

 負の連鎖は一度始まってしまえば止まることはなく、二人の仲は良好に進むどころか険悪さを深めていってしまった。

星空みゆき「…………」

緑川なお「みゆきちゃん!! 危なーい!!」

 この状況をどうすればいいかと考えていたみゆきの顔面にも、同じようにバスケットボールがクリーンヒットする。







 屋上の一角に集まったみゆきたちは、目に見えてグッタリしていた。

 特に、豊島と天願の二人と同じ時間を多く共有していたみゆきとあかねの疲労感は半端ではない。

 にもかかわらず……。

黄瀬やよい「成果、なかったね……」

緑川なお「何とかしようとは思ってみたけど……」

青木れいか「男の子同士の親睦は、女の子のように上手くはいかないのですね」

日野あかね「いや、人に寄るやろ。そこは」

 そう簡単にいかない気はしていたものの、手応えなしとは予想できなかった。

 少なからず距離は縮まるかと思いきや、もしかしたら更に悪化してしまったかもしれない状況に気持ちばかりが焦る。

 こんなことになるなら余計な気など回さなければ良かった、と思ってしまえば最後なのだ。

星空みゆき「何とかならないかなぁ…。こんなの全然ハッピーじゃないよぉ……」

日野あかね「せやなぁ…。ホンマに何とかせんと……」

 新たな作戦を考えようと頭を悩ませ始めていた、その時だった。

ウルフルン『おーいッ! みゆきー!!』

星空みゆき「え?」

 何処からか、ウルフルンの声が聞こえてきた。

緑川なお「…? どうしたの?」

星空みゆき「いや…、今……ウルフルンの声が聞こえた気がした」

日野あかね「片想い過ぎの幻聴や」

星空みゆき「どういう意味ッ!!? そんなんじゃないって!! 本当に聞こえたのぉ!!」

 しかし、辺りを見渡しても姿はない。

 本当に幻聴だった場合、みゆきの心境が相当に気なる展開なのだが、そんな空気を断ち切る声が反響する。
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