絵本の世界と魔法の宝玉! Second Season
□あかねの使いやあらへんで!
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しかし、当人のルプスルンに臆する様子はない。
ルプスルン「怖い? オレが怖いってのか? プークスクスクスッ、当然だろッ! 何故ならオレはッ」
女性店員「お客様、またのご来店を」
結果、入店拒否として締め出された。
一部始終を窓の外から眺めていたアクアーニの前で、ルプスルンは両手の拳を握り締めながら歯軋りを繰り返す。
ルプスルン「……人間って食えるよなぁ…ッ…」
アクアーニ「やめておけ。無駄な騒ぎを起こすな」
ルプスルン「クソッ。空腹状態でなけりゃ、オレの魔句詠唱で店ごとメチャクチャにしてやるってのに!!」
アクアーニ「それは構わんが、私を巻き込むなよ………む…?」
空腹に悩むルプスルンを尻目に、アクアーニは店の前に落ちていた物を拾い上げる。
打出の小槌のようなそれを手に取った時、アクアーニの勘が鋭く働いた。
アクアーニ「(微かだがマジカルエナジーを感じる……。この小槌、人間界の物ではないな……。マホローグの私物か?)」
この時アクアーニは、開発したばかりの指輪を探しに出かけているマホローグが、立て続けに落し物をしたのだと推察した。
しかし、本当の開発者はマジョリーナであり、その小槌を探しているのがウルフルンたちだと知る事になるのは……もう少しだけ後になる。
豊島と天願を連れ、お好み焼き屋あかねに到着したみゆきたち。
鉄板を前に四種類のお好み焼きを作り始めるあかねが、声高らかに宣言した。
日野あかね「“第一回、あかねの使いやあらへんで! チキチキ、これやってみたかってん第一弾! 絶対に美味しいお好み焼き選手権”ッ!」
みゆきたちが拍手する中、何が何だか分かっていない豊島と天願は揃って呆然としていた。
日野あかね「まぁ簡単な話、みんなでホンマに美味しいお好み焼き作ったろう、っちゅー事や」
豊島ひでかず「いや、何となく流れ的にそうなんだろうとは思ったけどさ……。タイトルでヤバい感じが否めねぇんだけど」
天願朝陽「ははは! 完全にガキ使の番組だからよ、これ♪」
豊島ひでかず「何でちょっと楽しそうなんだよ、お前は」
初っ端に険悪さは感じられない。
良いスタートを切り出せたところで、今回のメインが明かされる。
日野あかね「それでな? ホンマはウチのお好み焼きを食べてもらっても良かったんやけど……どうせならみんなで新メニュー考案も兼ねた新しいお好み焼きを作ろうと思うたんよ」
豊島ひでかず「へぇー」
日野あかね「そんなわけで、今からみゆきたち四人に持ち込んでもろた材料を混ぜ込んで、お好み焼きを食べてもらうで〜♪」
お好み焼きを四種類も作っている理由が判明した。
どうやら今から、このお好み焼きにみゆきたち四人が持ち込んだ新たなお好み焼きの材料を加えていくつもりらしい。
トップバッターはれいかだった。
青木れいか「辛いものには甘いもの。ソースの辛味を引き立てるためにも、わたしはお砂糖を用意しました」
天願朝陽「お好み焼きに砂糖!?」
豊島ひでかず「おいおい、大丈夫かよ……」
しかし容赦はない。
完成目前のお好み焼きに、あかねはれいかの持ってきた砂糖を思いっきり降りかけた。
日野あかね「もう熱で溶けてってるで……」
青木れいか「ですが、きっと味は引き立っていると思いますよ」
豊島ひでかず「(味見もしてねぇ商品を客に食わすのかよ……)」
見た目は普通だった。
だが目の前で作られたからこそ脳裏に浮かび続けるが、そのお好み焼きには砂糖が含まれている。
天願朝陽「そんじゃ、いただきまーす!」
豊島ひでかず「マジか……」
二人に続いて、店裏ではみゆきたちも試食していく。
空腹だったウルフルンたちも食しているだろうが、どんな反応を見せているのだろうか。
日野あかね「………まぁ…意外と美味いけど…」
緑川なお「いや、あたしは…ちょっと……」
黄瀬やよい「微妙だね。好き嫌いが分かれそう……」
星空みゆき「どっちでもいい感じなのかな? 普通に美味しい感じだから、別にお砂糖あってもなくても……」
美味しかったら店の新メニューに、とも思ったが……幸先が良いとは言えなかった。
十点満点で評価するならば、豊島も天願も揃って五点を出すレベルだろう。
緑川なお「よしッ、次はあたしだね!」
なおが持ってきたのは、カレーの隠し味にも使われるハチミツだった。
天願朝陽「おぉ〜」
豊島ひでかず「まぁ上手い具合にマイルドになるんじゃねぇの?」
日野あかね「期待するとこやな♪」
完成間近のお好み焼きにハチミツを加えて混ぜていく。
焼き上がったものを全員で試食してみた結果は……。
青木れいか「…………ハチミツの味が強くなりましたね」
日野あかね「自己主張が激しいねん……」
黄瀬やよい「わたしは大丈夫な方かな」
星空みゆき「ごめん…、わたしは無理………」
緑川なお「う〜ん……二人はどんな感じ?」
話を振られた二人の内、豊島が真っ先に即答した。
豊島ひでかず「不愉快」
天願朝陽「後味が鼻から抜けてくみたいだからよ……嫌に残るなぁ、これ……」
評価は豊島が一点、天願が三点。
結果、あまり美味しくはなかった様子だった。
次にやよいが用意した食材はミカンだった。
天願朝陽「黄瀬さんッ、それ中身ほとんど水分だからよ!?」
黄瀬やよい「でも甘いよ?」
日野あかね「これ賭けやなぁ……。中には酸味の強いミカンもあるんやでぇ……」
豊島ひでかず「怖ぇなぁ……」
ミカンが潰れないようにお好み焼きに加え、トッピング感覚で添えていく。
砂糖やハチミツとは異なり、完成した見た目から十分なインパクトを与える一品になった。
その味は……。
豊島ひでかず「………ぅぇ…」
天願朝陽「……何か………ミカン、混ざって…。ぁぁ……」
熱いお好み焼きに添えただけのミカンは、その水分が災いを呼ぶ。
口の中でお好み焼きを一気に冷ましてしまい、その食感も含めて気持ち悪さが広がっていった。
日野あかね「これ……アカンなぁ」
星空みゆき「ちょっと気持ち悪いね……」
しかし、それはあくまでも過程の話。
頑張って完食してみると、また意外な一面が見えてきた。
緑川なお「……あれ? でも後味はサッパリしてるね?」
青木れいか「これはこれで、また別の“美味しさ”がある気がします……」
黄瀬やよい「でしょ!? 美味しいよねぇ、これ!」
食べ終わった後は意外と爽快で、何だかもう一口くらい食べてみたい気が湧いてきた。
しかし、だからと言って食べ始めると……。
天願朝陽「おぇ……」
日野あかね「いや、アカンて……悪循環や」
結局、食べる過程での気持ち悪さが解消されることはなかった。
評価は揃って三点。
後味の良さが食中に反映されていたら、もう少し評価も高かったかもしれない。
星空みゆき「それじゃあ、最後はわたしだね♪」
そう言ってみゆきが用意した材料は……生クリームだった。
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