絵本の世界と魔法の宝玉! Second Season
□宝玉だけは渡さない!
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それを目前に、周囲を警戒しながらみんなの無事を願って避難していたれいかも、思わず身を乗り出して駆け出そうとする。
青木れいか「なおッ!!」
アカンベェに邪魔されているみゆきたちでは、なおの助けに向かえないのだ。
星空みゆき「なおちゃんッ!!!!」
緑川なお「ーーーッ」
マホローグ「消し飛べぇ!!」
マホローグが破壊を促す魔法を撃ち放った、次の瞬間。
なおの右手が、マホローグの放った魔法よりも強力な光を放つ。
その直後、まるで息を吹きかけられて消失した炎のように、マホローグの魔法は跡形もなく消し飛んでいた。
マホローグ「ーーーなッ!!?」
緑川なお「……え…?」
驚愕するマホローグだったが、なおも同じ状況だった。
呆然としながら右手を見ると、朝方に拾った指輪が中指でキラキラと輝いている。
どうやら、この指輪がなおを守ってくれたらしい。
緑川なお「…これ……、一体なんなの……?」
マホローグ「んん……? あぁッ!! その指輪ぁ!!」
緑川なお「え?」
マホローグが探し続けていた魔法の指輪。
それは、なおが拾っていた指輪で間違いはなかった。
マホローグ「それは僕が発明した魔法の指輪だッ!! 何故お前が持っている!!?」
緑川なお「え? え? こ、これ……朝、登校中に拾って……」
マホローグ「か、返せ!! それは誰が使おうと、消費するエネルギーは僕のマジカルエナジーなんだよ!!」
焦りが先立ったのか、マホローグは何の芸もなくなおに近付いて手を伸ばす。
よく分かっていない指輪なんかよりも、その手に握る宝玉の方が大事だったなおだが、マホローグの動作には宝玉を狙っているように見えなくもない。
結果、宝玉を渡すまいとマホローグを敵視したなおの気持ちに反応するように、再び指輪が輝きを増す。
緑川なお「…わッ!!」
直後、指輪が変形して金属の棍棒が勢いよくマホローグに放たれる。
マホローグ「ーーーぐぶふぁッ!!」
その対応が間に合わなかったマホローグは、金属の棍棒による一撃を顔面で受け止めてしまった。
マホローグが吹き飛ばされてなおから離れると、指輪は再び元の形を取り戻してキラキラと輝く。
マホローグ「……クソ…ッ、厄介なものを…!!」
緑川なお「…………ッ」
倒れこむマホローグを見て、なおは胸が高鳴っていく。
弱いものイジメに興奮しているのではない。
ずっと気にしていた、自分に出来る手助けの一つが大きく前進したような気がしたのだ。
緑川なお「あたし……戦えてる…ッ。これなら、みんなの役に立てる…ッ!」
マホローグ「ほざけぇ!! こうなったら宝玉なんざ後回しだ! 何が何でも取り返してやる!! アカンベェッ!!」
みゆきたちの相手をさせているアカンベェたちから、数体ほど呼び戻して従わせる。
なおを相手に本気を出すのは宝玉のためではない。
せめて指輪を取り戻すため、マホローグはなおを相手にも全力を出す。
日野あかね「なおッ!」
緑川なお「こっちは大丈夫! 任せてッ」
みゆきもあかねもやよいも、自分たちに向けられたアカンベェで手一杯だった。
しかし、アカンベェを前にしたなおの表情に恐れはない。
右手の中指で輝く指輪を構え、左手に握る宝玉を離さないようにしっかりと握り締めた。
緑川なお「……来いッ!!」
遊具アカンベェ「アカンベェ!!」
マホローグ「………チッ…!!」
指輪で魔法を発動する度に、マホローグからマジカルエナジーが消費されていく。
このままなおのペースで戦われては、マホローグが自滅する未来が見え透いてるようだった。
マホローグ「(何とかしなけりゃ、こっちが確実に負けちまう……ッ。クソが!! どうすりゃいいってんだッ)」
そんな状況下で、新たな来園者が公園へと踏み込んでくる。
腹を空かせたルプスルンとアクアーニも、当然の如く宝玉の気配を察知していた。
アクアーニ「む? もうマホローグが戦っているのか」
黄瀬やよい「ーーーあッ」
日野あかね「嘘やろ…ッ。ただでさえ手一杯やのに…!!」
しかし、二人がすぐに動くことはなかった。
ルプスルンは空腹で動けないとして、アクアーニが仁王立ちしたまま加勢してこない理由は何なのだろうか。
マホローグ「おい、アクアーニ! ボーッとしてないで手伝ったらどうなんだ!! こいつの右手から指輪を取り戻すんだよ!!」
アクアーニ「君の事情に協力するつもりはない。私は大人しくを探させてもらう」
マホローグの失態は、こんな状況でも宝玉より指輪を優先して協力を仰いでしまったことだ。
もしも最初に宝玉を奪うために戦っている、と説明していればアクアーニも動いてくれたに違いない。
指輪を優先して協力を仰いだ今となっては……。
マホローグ「馬鹿が! こいつは宝玉も一緒に持ってんだよ!! いいから大人しく協力しろッ」
アクアーニ「…………」
もはや指輪奪還に協力してほしいがためのハッタリにしか聞こえていないのだ。
故に、アクアーニはマホローグの言葉に耳を貸すことはない。
ルプスルン「…もう限界だ……。腹が減って…力が出ねぇ……………ん…?」
すると、空腹ダウン中だったルプスルンの鼻に反応があった。
視線を向けてみれば、そこには豊島たちと一緒に食べるために持ち込んできたお好み焼きの残りが置かれている。
みゆきたちは公園に到着して早々から宝玉探しを始めていたため、サイズは小さくても量は十分に残っていた。
ルプスルン「ーーーうぉぉぉおおおおおッ!!!! いっただっきまぁぁぁああああああすッ!!!!」
アクアーニ「まったく…。行儀が良いのか悪いのか…」
食前の挨拶を叫んだ瞬間、周囲に撒き散らすほどの勢いでお好み焼きに齧り付く。
その様子を見たマホローグは、ルプスルンが空腹状態であったことを思い出して妙案が閃く。
マホローグ「……! ウヒヒヒ♪」
ヒョイッ、と杖を構えたマホローグがルプスルンに向けて供給魔法を発動する。
すると、お好み焼きを食べて腹を満たし始めたはずのルプスルンから、確実に力が失われていく現象が表れる。
ルプスルン「もがッ!!?」
アクアーニ「む?」
ルプスルン「て、テメェ!! オレの体に何しやがった!!?」
マホローグ「協力しないなら強制的にさせるまでさ。お前の体力をアカンベェに供給させてやる。ほらほら、休まず食べ続けなきゃ飢え死にするぞ〜♪ ウヒヒヒヒヒ!」
ルプスルンが回復した体力が少しずつアカンベェたちの力になって吸収されていく。
お好み焼きを食べ続けてでも体力を保たなければ、ルプスルンの力は全てアカンベェに吸い取られてしまうのだ。
ルプスルン「冗談じゃねぇッ、ブッ殺すぞ!!」
マホローグ「動くだけ無謀だ。早いとこ食事を再開しておけ。それだけで僕の役に立つんだからさ」
アクアーニ「ふむ、なるほどな」
アクアーニは、用意されていたお好み焼きを集めてルプスルンの傍に運んでくる。
どうやらルプスルンの飢餓を救うために奔走してくれるらしい。
ルプスルン「クソッ……食い続けなけりゃ死んじまう……ッ」
アクアーニ「(これでアカンベェが強化されるなら、安い物だ)」
もちろん、アクアーニの親切は建前だった。
アカンベェを強化してみゆきたちのような邪魔者を足止めするため、アクアーニはルプスルンに飯を食わせていく。
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