絵本の世界と魔法の宝玉! Second Season

□どん底ハッピー?
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 修学旅行、一日目。

 みゆきたちは京都に到着した。

星空みゆき「おぉ〜、高ーい! あれが通天閣かぁ〜」

青木れいか「京都タワーですよ、みゆきさん」

 もう一度言うが、一日目は京都である。

 大阪に向かうのは三日目だった。

佐々木先生「修学旅行は遊びではありません。くれぐれも周りの人たちに迷惑をかけないように」

 佐々木先生からの忠告も終わり、みゆきたちは集団行動で京都を回っていく。

 歴史の町とされる京都の観光名所は広く、みゆきたちはあちこちを忙しなく回っていく。

 その一方で、集団行動のはずなのに単独で動いている者もいた。

天願朝陽「あれ?」

 その人物に気付き、天願は自分の班から少し離れて近付いていった。

天願朝陽「準一く〜ん、何してんのー?」

桜野準一「ん? あぁ、朝陽か」

 この頃、既にお互いに名前で呼び合うほど親しくなっていた。

 何故か一人で行動していた桜野だったが、その理由は単純だった。

桜野準一「班のみんなに避けられてな……。心苦しいから俺から離れてやったんや……」

天願朝陽「おうふ」

桜野準一「そしたら誰も追いかけてこんねん…。なぁ、俺ってそんなに怖いんか…?」

 桜野の見た目は不良と言って過言ではないくらいの強面である。

 そのことから誤解されて怖がれ勝ちだが、彼の内面は外面とは真逆。

 その事実を知っているのは天願を含めて極少数で、彼と普通に接することができる同級生は少ない。

 否、もしかしたら天願だけなのかもしれない。

天願朝陽「苦労してるなぁ……」

桜野準一「しずくは普通に話しかけてくれるんやで? 何で後輩女子と話せて、同級生男子とは話せへんねんッ。おかしいやろ!」

 しずく、とは後輩の森山しずくのことである。

 ちょっとした縁があって、天願と桜野としずくの三人は先輩と後輩という関係であっても、学校の中では一緒にいることが多い。

 そんな関係が続いた今、ここにいないしずくの存在が心から恋しくなる桜野であった。

桜野準一「俺、ホンマ普通に帰りたいわ……」

天願朝陽「せめて同じクラスだったらねぇ〜。僕が一緒に回ってあげてるんだけど……」

 生憎と、一組と二組では行動順路が異なっていた。

 偶然にも一致していた金閣寺の敷地内で出会えたから良いものを、ここを出ればまた別れることになる。

天願朝陽「宿泊先のホテルに帰ったら、空きの自由時間はあるみたいだからよ。話ならそこで思いっきり聞いてやるわ♪」

桜野準一「…おおきに………」

 そう言って、二人が別れた直後のこと。

 金閣寺の周囲に広がる池の中に、誰かが転落したらしく大騒ぎになっていた。







 金閣寺の前で記念の集合写真。

 その中で唯一、制服からジャージに着替えている少女がいた。

星空みゆき「……京都でジャージなんて悲しすぎる…」

天願朝陽「(さっきの騒ぎ、星空さんだったのか…)」

 金閣寺の池に転落してジャージ姿になったみゆきは、見るからに肩を落として凹んでいる。

日野あかね「しゃーないやろ。制服、水浸しなんやから」

黄瀬やよい「そうだ! あっちにおみくじあるんだよ? 行こう行こうッ」

 気分を変えて観光再開。

 みゆきたち四人は個々におみくじを引いて、その結果に一喜一憂していく。

黄瀬やよい「やったぁ! 大吉ッ」

青木れいか「わたしは中吉ですね」

日野あかね「ん〜……末吉ってええの? 悪いの? どっちなん?」

 そんな中、みゆきのおみくじ結果が開示される。

星空みゆき「ふっふ〜ん♪ 大吉に決まってるよ〜、大吉〜♪ ほら見てー!」



 大凶。



星空みゆき「え?」

 大吉とは真逆の結果。

 みゆきは、ある意味では見事に大凶を引き当ててしまった。

黄瀬やよい「……大凶だ…」

青木れいか「…大凶、初めて見ました」

日野あかね「足元、持ち物、食べ物、注意。って不吉のオンパレードやん…」

星空みゆき「…………」

日野あかね「せ、せやけど! 逆に凄いやん!」

黄瀬やよい「今が一番悪い時なんだから、これから良いこと待ってるはずだよ!」

 おみくじで励ますはずが、更に凹んだみゆきをみんなで励ますことになった。





 ちなみに、この場所とは異なる場所でもおみくじを引き、みゆきと同じ思いを痛感している人物がいた。

桜野準一「………京都まで来て……、大凶て…」

 瀕死のヒットポイントを打ち砕く、トドメの一撃を刺されたような気分だった。

桜野準一「ホンマに帰ってええかなぁ……。七色ヶ丘やなくて、実家の大阪に……」

 今、この場に彼を励ましてくれる人物は誰もいない。







 場所は戻って、みゆきたち一行。

 鳥のフンが頭に落ちてきて大騒ぎするみゆきたちの傍で、何気なくおみくじを引きに来た観光客がいた。

伊勢崎青葉「……中吉か…。まあまあね…」

 かつて、あかねがニコと魔王の二人と一緒に備考したことのある、インターポール所属の特命捜査官。

 伊勢崎が京都に来ていた理由は、当然ながら変死の怪事件を調査するためである。

 ここのおみくじは気紛れに立ち寄ったようなものだったが、捜査進展の願掛けになればという思いもあった。

伊勢崎青葉「重要な事柄に進展なし……大きな出来事のきっかけを掴む……。まさしく中吉ね。いいのか悪いのか、判断が難しいじゃない」

 この時、まだ彼女は気付いていない。

 彼女が京都にいる今現在、同じ時期に修学旅行で京都を訪れていたみゆきたち。

 この二つが交差した時、彼女の任務は大きな進展の糸口を掴むということを。







 その後、少数班での自由行動となったみゆきたちだったが、ここからが災難続きとなった。

 嵐山の渡月橋では記念写真の撮影に失敗し、お土産屋さんでは崩れてきた商品で頭を打ち、抹茶ソフトは食べ損ね、お土産は落として破損させた。

星空みゆき「…………」

 髪が割れて禿げた小芥子を手に、みゆきの気力は見る見る内に低下していく。

日野あかね「み、みゆき……」

黄瀬やよい「大丈夫…?」

星空みゆき「………うん…」

青木れいか「そろそろ戻る時間です…。行きましょうか」

 散々な一日目は終わりに向かい、みゆきたちは宿泊先のホテルへと到着した。
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