絵本の世界と魔法の宝玉! Second Season
□宝玉発生?
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好きな人はピーターパンだと告白するものの、中身は完全にウルフルンだった。
それを指摘されて初めて、みゆきは今まで以上の動揺を見せた。
星空みゆき「違うよッ、あかねちゃん! さっきまで絵本の世界の話だったから、つい頭の中に浮かんできただけでッ!!」
青木れいか「頭に浮かんだだけで、好きな人の想像と混ざってしまうものなのですか?」
星空みゆき「ぅ……」
黄瀬やよい「みゆきちゃんの中のウルフルンって、結構大きな存在なんだね?」
星空みゆき「ぅぅ……」
日野あかね「そういや、絵本の世界まで連れてってもろたのもウルフルンなんやろ? ウルフルンがピーターパンなら、絵本の世界はネバーランドやな? 夢叶ったやん♪」
星空みゆき「ぅぅぅ〜……ッ」
これ以上みゆきを集中攻撃しても新展開はないだろう。
現にみゆきは何も反論できず、湯気の立ち上る頭を枕にバフバフと押し付けることでしか反応できていない。
黄瀬やよい「ウルフルンもそうだけど、絵本の世界の人たちって個性的だよね? そういう意味なら、わたしも憧れるなぁ〜」
青木れいか「やよいさんは、ふしぎ図書館でもアカオーニさんといることが多いですね?」
日野あかね「言われてみればそうやな! んん〜? やよいはアカオーニが好きだったりするんかぁ?」
黄瀬やよい「うん♪ 最初は怖かったけど、今はアカオーニのこと大好きだよ♪」
一瞬、沈黙。
しかし、やよいは何故みんなが黙ったのか分からずに首を傾げて疑問符を浮かべる。
おそらく、やよいの言った“好き”の意味合いと、みんなが思い浮かべた“好き”の意味合いが異なっているのだ。
英語に表せば“like”と“love”の違いである。
日野あかね「この流れでそこ掴み損ねるか……。さすがやな……」
黄瀬やよい「……?? あ、れいかちゃんはどうなの?」
青木れいか「そうですね……。なおのことをお任せしていますし、フランドールとチェイサーには恩を感じていますね」
星空みゆき「ねぇ? わたしたちが留守の時に会ってたみたいだけど、あの“ジョーカー”って人はどうなの?」
日野あかね「あぁ、そんなヤツもおったなぁ。あん時も二人きりで何かあったみたいやけど……」
青木れいか「どなたですか? 存じませんね」
それは、まるで氷のような笑みと声でした……。
星空みゆき「えーっと……。じ、じゃあッ、あかねちゃんは!?」
日野あかね「え?」
黄瀬やよい「絵本の世界の人たちで、気になる人っていないの?」
最後まで残され、ついに白羽の矢が当たったあかねが答えたのは、少しだけ意外な人物だった。
日野あかね「う〜ん……。会うたことある連中の中やったら……魔王かな?」
星空みゆき「え!? そうなのッ?」
黄瀬やよい「意外だね……」
青木れいか「以前ご一緒に行動していた際、何かあったのですか?」
あかねは、ニコと魔王の二人と一緒に動物園を歩いて回ったことがある。
ニコを除くことになるが、あかねと魔王が直接関わったことがある案件といえば、その時に大きな進展があったと思われるが、どうやら少し違うらしい。
日野あかね「いや、そういうわけとちゃうねん。好きとか嫌いとかもよう分からんし、実際どう思うてんのかも分からんねん……。せやけど……」
星空みゆき「………せやけど…?」
日野あかね「何やろなぁ……。何か気になんねん…。誰かと似てるような気もすんねんなぁ…、これが……」
魔王は、あかねの知っている誰かに似ている気がする。
それが魔王を気にしている大きな理由だった。
答えが分かっていないからこそ、あかねはそのモヤモヤ感を解消することができずにいたのだった。
同時刻の七色ヶ丘市。
お好み焼き屋“あかね”にて、明日の営業準備を進める大悟は身震いしていた。
日野大悟「……ッ。な、何や……? こんな時間に誰かが噂でもしてるんかいな……?」
再び、宿泊先のホテルにて。
先生の説教を受け終えた天願たちがホテルの廊下を並んで歩んでいた。
天願朝陽「長かったねぇ…先生のお説教…」
桜野準一「すまんなぁ……。完全に俺の大凶が原因やわ……」
天願朝陽「そんなの考えすぎだからよ。ほら、さっさと部屋に戻って寝ちまおうって! な?」
桜野準一「……せやなぁ……………って、あれ…?」
廊下を見渡す。
ズラリと並ぶ部屋の扉は、外側から見れば全て同じ色と形。
明確に部屋の場所を記憶していなかった桜野の手元に、宿泊部屋を記載した修学旅行のしおりはない。
桜野準一「……俺…、何処の部屋やったっけ?」
天願朝陽「そればっかりは分からん! 端から調べて潰してくしかないなぁ〜、これは」
桜野準一「……マジか…」
消去法で部屋探し。
仕方なく天願も付き合うことを決めたが、七色ヶ丘中学の二年生全員が割り当てらてた部屋の数は相当数である。
既に睡魔の誘いを受け始めている二人に限界が訪れる前に、何とかして部屋を見つけ出さなくてはならない。
桜野準一「言うてもしゃーないな。早よ探さなアカンわ」
天願朝陽「まず一つ目〜」
最も手近な扉を開け、部屋の中に進んでいく。
既に布団が敷かれているようで、四人ほどの気配が感じられる。
だがどうやら既に眠りに就いたらしいため明かりが点けられず、暗いままでは誰なのか判別が難しかった。
天願朝陽「同室のクラスメートっぽい?」
桜野準一「ん〜? 分からんなぁ……もう少し近付かんと…………あん?」
顔を確認しようと迫ったところで、布団の中から足を掴まれた。
直後、桜野はそのまま布団の中へと引きずり込まれていく。
桜野準一「ぉうわッ!!」
天願朝陽「ええッ、何してんの準一くんッ!?」
桜野準一「いや、俺もよく分からな…………あ?」
抱き枕のように引き込まれた際に、体に押し当てられる柔らかい感触。
加えて、準一の引きずり込まれた布団は独特の良い香りで包まれており、明らかに男子が寝そべるような布団ではない。
例えるなら、そう……まるで女子特有の香りに近いようで……。
桜野準一「…………」
天願朝陽「…………」
準一、心拍数が急上昇する胸を自覚しつつゆっくりと振り返る。
自分の体を抱き枕代わりに抱きしめている人物は……。
日野あかね「…すやー………」
桜野準一「(オーーーマイガーーーッ!!!!)」
心で絶叫。
助けを求めようと手を伸ばし、ここが女子部屋だと気付いて逃げようとする天願の足を掴む。
天願朝陽「(南無三!!)」
桜野準一「(アホかッ!! 友達やったら助けんかい!!)」
天願朝陽「(いやぁ! 離して!! これ以上大凶の共犯になったら、僕の学生生活転落確定だからよぉッ!)」
しかし、天願は知らなかった。
今この部屋の中には、桜野の他にもう一人……他人に不幸を伝染させる大凶を引き当てた人物がいることを。
星空みゆき「んん……ん〜……」
天願朝陽「ぃぃッ!!?」
桜野に掴まれた足とは別の足を掴まれ、桜野と同じように布団の中へと引きずり込まれる。
慌てて脱出しようとするが、天願に移った大凶効果は桜野の比ではない。
桜野はあかねに背中から抱きつかれているが、天願はみゆきに真正面から抱きつかれてしまった。
それも、頭を抱えられてみゆきの胸に顔を押し付けられる形で。
天願朝陽「ーーーッむぐ!! んんんんーッ!!!!」
星空みゆき「ん〜……くすぐったい…………、すぴー……」
顔をみゆきの胸で包まれる柔らかさだけならまだマシだったが、所詮は抱き枕代わり。
まともに息もできず、睡魔に襲われていたこともあって天願の意識は少しずつ確実に削られていく。
そして、それは背中からあかねに抱きつかれている桜野も同じことで、甘い香りに包まれた暖かな布団の中は、睡魔の追撃に申し分ない威力を誇る。
桜野準一「(………あぁ…、俺ら……終わったな……)」
次に問題を起こせば、ただでは済まさない。
先ほどの説教で最後に言い渡された先生の言葉を思い出しながら、ついに二人の意識は眠りの底へと叩き落とされたのだった。
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