迷夢録『うつろ』
□第十三話
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でもたしかに、私は六郎や銀時のほうが晋助よりもずっと良いと思っていました。彼らのほうが晋助よりずっと人付き合いがうまく、冗談も面白いのです。
それに、一緒にいて苦しくなったりしません。よっぽど気楽で、その心地よさを私は六郎に求めました。
「あれ?六郎は?」
ある日、戦地から帰ってきた仲間達に「お帰り」を言おうとして六郎がいないことに気がつきました
「六郎は…」
小太郎が困ったように目をふせました。
「…。そっか」
私はフラフラとした足取りで自室に戻りました。
私は自分が泣かなかったことに驚きました。すごく悲しいのに、辛いのに、苦しいのに、むなしいのに、
なぜでしょう、涙がでませんでした。