迷夢録『うつろ』

□第十三話
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「…泣いてるのか」


自室でぼんやり過ごしていると、ヒトカゲさんがやってきました。


「泣いてない」


「…強がらなくたって、いいんだぜ」


本当に強がってなんかないのです。ただ心が空っぽになったような気がするだけ。

晋助が背後から私を抱き締めました。


「七瀬…だから言っただろうが、あいつと仲良くしても無駄な思いをするだけだってな」


無駄な思い?この虚無感のこと?


「あいつのことなんか忘れちまえ。いいじゃねぇか、俺がいる。俺がいるだろ…」
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