迷夢録『うつろ』
□第二十話
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「いってぇぇえぇ」
重力に負けて地面に落ちた惣一郎くんが「うあう」とうめいてお尻を押さえているのを晋助は「ハッ」とばかにしたように笑いました。
「おめーが離せって言ったから離してやったんだろうが」
「ぐぬぅ…。いいもん、七瀬姉ちゃんに慰めてもらうから!」
「なっ」
晋助が呆気にとられているのをよそに、惣一郎くんはに抱きついてすりすりと頬をよせてきました。もちろん、いつものごとく胸に。
「いいきもちー」
「ちょっ、ちょっとやめて惣一郎くん…!ふぁぁっ……」
人に触れられることのない場所であるだけに、頬をすりよせられるだけでもとてもこしょぐったいのです。
困っている私から、晋助はまたしても惣一郎くんをひっぺがしました。