迷夢録『うつろ』

□第二十話
2ページ/5ページ

「いってぇぇえぇ」


重力に負けて地面に落ちた惣一郎くんが「うあう」とうめいてお尻を押さえているのを晋助は「ハッ」とばかにしたように笑いました。


「おめーが離せって言ったから離してやったんだろうが」


「ぐぬぅ…。いいもん、七瀬姉ちゃんに慰めてもらうから!」


「なっ」


晋助が呆気にとられているのをよそに、惣一郎くんはに抱きついてすりすりと頬をよせてきました。もちろん、いつものごとく胸に。


「いいきもちー」


「ちょっ、ちょっとやめて惣一郎くん…!ふぁぁっ……」


人に触れられることのない場所であるだけに、頬をすりよせられるだけでもとてもこしょぐったいのです。

困っている私から、晋助はまたしても惣一郎くんをひっぺがしました。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ