迷夢録『うつろ』

□第二十話
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私たちは惣一郎くん親子ととても親しくなっていました

時期的に考えて『凶悪な反逆者(攘夷浪士)』の生き残りだと周囲に既に推測・認識されていた私たち二人を受け入れてくれる存在があることはとてもありがたいものでした。

晋助が惣一郎くんに大人げなく声をあらげるのも、心を許しているからであるように思えました。


「七瀬姉ちゃんと晋助さぁ、そんなに働かなくて大丈夫なの?」


「えっ」


「だってさぁ、いっつも二人とも河原でぼんやりしてんじゃん。まるで老夫婦みてーに」


惣一郎くんの何気ない言葉に私は背中がヒヤリとしました。実は、そのころは丁度もうそろそろ生活資金もつきそうなときでした。晋助もいつもなら何か言いそうなものであるのに、口をつぐんでいました

私たちも働き口を探していなかった訳ではありませんでしたが、…見つからなかったのです。

得たいの知れない流れ者としていつのまにか噂の広まっていた私たちを雇ってくれるところはありませんでした。少し遠くまで視野にいれて働き口を考えるべきだろうか、と晋助と話していた頃でした。
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