迷夢録『うつろ』
□第二十話
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「なぁ、困ってるんだったら俺がどうにかしてやろうか?」
惣一郎くんがいたずらっぽくニヤリとわらいました。
「ええっ、どうにかしてやるって…でもそれは」
私はゴニョゴニョと口ごもりました。よく思われていない私たちと親しくしていることはあまり口外しないように惣一郎くんには日頃からいっていました。惣一郎くんの手を借りると言うことは、彼が私たちとの関係を触れ回ると言うことです。
「バカ言え。ガキになにができる」
晋助もそのことを気にかけたのでしょう。いつもよりずっとキツい口調でとがめました。
「むうう」
しかし、惣一郎くんにその言葉は逆効果でした。
「前々から思ってたけど、俺、ガキじゃねぇもん!」
自分を子供と認めたがらない子供は、強情になってしまったようでした。
「見てろよ!俺がどうにかしてやっから、そしたら晋助、オマエさぁ」
惣一郎くんは無理に低い声をつくって言いました。
「"七瀬"のこと諦めろよ!じゃあな!」