milk
□#7 知ル
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押し倒されたとかは言えなかった。
「そうかぁ、狗神が明菜ちゃんに"お前がほしい"と詰め寄った、と。
それで怖くて逃げてきたんだな」
「は、はい…」
実際にはちょっと違うけど、とりあえずそう説明しておいた。
「それで、明菜ちゃんはどうしたいんだい?」
「え、私ですか」
「狗神を受け入れるのか、受け入れねぇのか」
彼は、コロちゃんだ。
コロちゃんに、もらわれる…?
考えられない。
だって、でも…。
彼の綺麗な顔、立ち居ふるまい、そして…
"都合の良い解釈ですね"
なんだかんだ助けてくれる、彼が。
どういうつもりなんだろう、彼は。
「明菜ちゃんは、何に迷ってるんだ?
狗神は冗談でほしいとか言う奴じゃないよ。」
「そ、それはそうでしょうけども」
でも迷うのだ。
「…今日はこれで失礼します」
ありがとうございました、と私は信楽に一方的に声をかけて、また逃げ出した。