迷夢録『うつろ』
□第三話
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松陽の元にきて初めて一人で夜を過ごしました。あの日のことは、本当によく覚えています。
布団に潜り込んで、必死で丸まって。それでもやっぱり私は怯えていました。
ーーーガタガタガタッ
「…ひっ」
風が障子で揺れたことにも恐怖しました。とにかくすべてが怖かったです。
「うぅ…」
怖い。
夜は私が一番多くのものを失った時間でした。家族を救えなかったこと、後悔しました。もしもあの時…と嫌でも思い出してしまいました。
「あ…ぐ……」
松陽先生も失うかもしれない。そばにいないと、安心できない。でもそんなことをいったら、疎ましく思われるかもしれない