迷夢録『うつろ』
□第九話
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「う…ふぅ…」
夜。
怖くて眠れないのは、いつぶりだったでしょう。
「七瀬」
小さく、障子のむこうから声がしました。それはひどく切なげで、とても優しくて、私をとても安心させました。
「晋助…?」
月の光が暗い障子により濃い大きな影を作っていました。それは障子の向こう側で腰をおろしました。
「…落ち着け」
「うん…」
晋助はそれだけいうと、私をなだめるためでしょうか、そこで夜を明かしました。
障子越しに彼の優しさを感じて、どうしようもなく胸が高鳴りました。