迷夢録『うつろ』
□第十話
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どすん、と手にたしかに手応えを感じました。
『ヴ…ぐうううっ…!うああああっ』
ぶちぶちと筋肉のちぎれる音と、ごりごりと骨に当たって刃がこすれる音、そして吹き出す血液の噴水
細かく急所をはずし切り刻んでいくと、何度も何度も男の絶叫が響きました。何度目かの私に吐かれる死の言葉は、呪いのように私に重くのしかかりました。
ーーー苦しませて、殺さなきゃ。
細かく小さく刃をたてていると男の手がぼとりと落ちました。
『ぐあっ…あああうっ!!!』
どすん、どすん、どすん
『がぁっっ!だず…ヴぇっ…』
声を聞きません。私は聞きません。聞きたくありません。
『あ…あう…う』
木にくくりつけられた哀れな男は、出血多量で死にました。たくさんの切り傷は彼の罪の証です。彼はそれを悔やむことなく、ただ最後まで恨むように私を見つめていました。
落ちた男の手が、私のほうへ向いていました。その手は一人でに地面を虫のようにうごめき、私のほうへ猛スピードで近づいてきました。