迷夢録『うつろ』
□第十二話
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数ヵ月かけて全快した私は、お寺でそこの所有者の娘さんと一緒に世話役として働きました。主な仕事は寺の管理と炊事洗濯です。
「いってらっしゃい」
「ああ、いってくる。」
はじめのうちは、朝みんなを見送るのが嫌でした。自分も戦いにいけない悲しさと、皆の無事を祈るしかないむなしさが嫌でした。
「おかえりなさい」
そんな言葉を呟くときは、もっと嫌な時間でした。銀時や小太郎は決まってなにかを失ったような顔をしていました。晋助も、わかりにくいけれど悲しんでいる様子でした。その拳はかたく握りしめられ、震えていました。
彼らが留守にしている間…戦闘が繰り広げられている間、寺にもときおり流れ弾が飛んできます。それに撃たれて死ぬ者もいました。戦にでむいていない私も勿論幾度か危ない目にあいました。
それでも、このころはまだマシでした。まだ反幕府軍にも望みがありました。