迷夢録『うつろ』
□第二十話
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「七瀬姉ちゃーーーん!」
ーーードンッ
「うわぁぁっ!」
背中から衝撃をうけて転びかけた私を晋助が抱き止めて支えました
「ごめん、晋助ありがとう…」
晋助の耳は私の言葉など聞こえていないようでした。片方だけの瞳は私の背後にいるであろう男の子…惣一郎くんをとらえています。
「…おい、危ねェだろうが」
晋助は私をちゃんと立たせると、むんずと惣一郎くんの服の背をガシリとつかんで持ち上げました
「ぎゃぁあだぁぁあ!離せっ!離せよう!」
いつものごとく惣一郎くんが暴れ、晋助が渋い顔でその様子を眺めています
「こんのォ〜ッ!…あうっ!!」
いつもなら晋助は惣一郎くんを宙ぶらりんにしたままなかなか離さないのですが、今日はすぐにパッと手を離しました。